メリーゴーランド258

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 まあ、別れたとはいえ、旦那がテレビで紹介されたりしたら、居ても立っても居られなくなったのもわからないでもないと、三田村は思った。
「昼、時間取れへん?」
 急かすように三田村は聞いた。
「え、まあ、取れるけど」
「千雪、あいつ、まずいで」
 すると電話の向こうで緊張した気配が伝わってきた。
「まずいて、何がや?」
 声が強張っている。
「とにかく、昼、何時?」
「一時やったら」
「ほな、一時にそこのビルに入っとる『トラド』って店」
 たったか指定して携帯を切ると、三田村は足早に家具屋に向かって歩き出した。
 
 
  

 いつの間にか、研究室のデスクにいるのをあらためて確認して、三田村に言われなくてもやはりぼんやりしている自分に、千雪は呆れていた。
 ちゃんとアパートに辿り着いて、機械的に着替えをしたのだろう。
冷蔵庫を覗くのも、もうルーティンのようになっている。
 おそらくサンドイッチが入っている紙袋、いつぞや京助が弁当の袋用に大量に購入してきたのだが、それも取り出してバッグに入れてきたらしい。
 色々考えていたような気がしたが、何を考えていたのか、頭がごっちゃになっている。
「おはようございます」
 向かいの佐久間が欠伸をした。
「今日、えろ寒いし、ビュービュー風吹くし、もう冬か思うと、よけい寒いし……」
 グタグタとくだらないことを呟きながら佐久間はパソコンを立ち上げる。
 千雪はパソコンを前に分厚い法律書を広げていたが、どうにも文字一つ頭に入ってこない。
 やばいな………。
「先輩、二限目、講義ちゃいますの?」
「え?」
 佐久間の声にはっと壁の時計を見ると、もう十分前で、千雪は慌てて立ち上がった。
 さっき来たばっかやったのに。
 時間が経つのも気づかなかったやなんて。
 やっぱ、あかんわ、これ。
 教壇に立ち、機械的に講義を進めた千雪だが、学生の質問に答えている自分がいるのをどこか頭の奥で見下ろしている自分がいた。
「先生」
 どうにか講義を終えて向かったのは宮島教授の部屋だ。
 ちょうど教授が戻ってきたところへ出くわした。

 


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