メリーゴーランド276

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「腹減ったな、二時過ぎとるし、何か食うか?」
 研二はメニューを広げて言った。
「パスタとかあるで?」
「海老とかホタテならええ」
 頬杖をついて海の方へ顔を向けたまま千雪はメニューも開かずに答えた。
「それとコーヒーか紅茶か」
「ミルクティ」
 研二がメニューを閉じると、長身でメガネの男性スタッフがやってきた。
「お決まりですか?」
「海老とベーコンのパスタ二つとコーヒー、とミルクティお願いします」
 研二の声は低く、通りがいいな。
 千雪は、ふとそんなことを思いながら研二を見た。
「和風でクリスマスに合わせるのって、難しない?」
 話が飛ぶのは昔から変われへんなと研二はフッと笑う。
「京都の店も毎年、クリスマスに合わせてちょっとはやっとったんやで?」
「そうなん?」
「まあ、ケーキ屋みたいに大々的にはでけんけどな。けど、芝ビルはビル全体がクリスマスカラーにレイアウトされるし、何か考えンとな」
 そう言いながら、研二はテーブルの上に置いてある店の二つ折りカードを見た。
 十二月に入るとクリスマスに合わせたメニューになるらしく、ケーキの予約受け付けの期日とかクリスマスイブのディナーは予約のみというようなクリスマス感あるデザインになっている。
 千雪も何気にそれを取ってみた。
「へえ、どこもこんなんやるんやな」
「ここはカップルがただでさえ多そうやしな」
 研二はあらためて店内を見回した。
 男二人で入っているのは研二たちだけで、女性客の三人組を覗けばあとはカップル客だ。
「なんか、すっかり実業家みたくなっとるやん、研二」
 千雪は笑みを浮かべる。
「そらな。東京のど真ん中にあんな店もたされて、ぼんやりしてられへんわ」
 生き生きしてて、ええ顔してるわ。
 千雪はこっそりまた広告を見ている研二の顔を見つめた。
「お待たせいたしました」
 先ほどのスタッフがパスタの皿をテーブルに置き、「お飲み物は後ほどお持ちいたします」と言って戻っていった。
「ピーマンやシメジがよう合うとる」
 パスタを口に入れて研二が言った。
「カッコづけの店にしては案外美味いな」
 千雪が余計な一言をつけ足した。

 


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