「ちゃんとしたシェフがいはるんやろ」
二人が食べ終えた頃を見計らって、コーヒーと紅茶が運ばれた。
「コーヒーのお客様は?」
「あ、自分」
スタッフに問われて研二が言った。
研二の前にコーヒーが置かれ、千雪の前にはポットウォーマーが被さった紅茶ポットとミルクピッチャー、カップとソーサーを置かれた。
「ランチの時間は過ぎておりますが、こちらカップルのお客様にお出ししています。よろしかったらお召し上がりください」
さらにプリンの皿を二人の前に置くと、「ごゆっくりどうぞ」と戻っていくスタッフに、千雪が何か言おうとするのを研二がその手を抑えて止めた。
「おおきに」
研二が礼を言った。
「なんやね!」
千雪が研二を睨む。
「前もようあったやろ、今さら腹立てるより、プリンもうけもんやないか?」
また女に間違われたことにカッときた千雪を宥めて研二は笑う。
「プリンまずかったら文句言うたる!」
眉根を寄せて早速プリンに取り掛かった千雪は、黙りこくったままぺろりと平らげた。
「これも美味いわ。うちのあんみつにプリン添えようかと思うとったんやけど、こんな自己主張が少ない感じならええかもな」
研二がしみじみと言った。
「プリンと抹茶アイスのクリームあんみつがええ」
千雪の提案に研二は笑みを浮かべる。
「検討するわ」
しっかりと温められたポットから注いだ紅茶もいい香りがした。
しばらくまったりとした時間を過ごしてから、「そろそろ行こか」と研二が言った。
千雪は黙って立ち上がり、コートを羽織った。
研二が会計を済ませているうちに、千雪は外に出た。
「おきれいな方ですね。モデルさんとか?」
スタッフにいきなり言われて、研二はさすがに戸惑った。
「失礼しました。このあたり撮影によく使われるので、モデルさん多いんですよ」
研二は笑みを浮かべ、千雪が聞いたら今度こそ、スタッフを怒鳴りつけかねないと思いつつ「ごちそうさまでした」とだけ言い残して店を出た。
車の傍らで千雪はまた海を見ていた。
「どこか、行きたいとこあるか?」
「帰ろ。研二、せっかくの休みやのに、疲れたやろ」
「俺はそんなヤワやない」
運転席に乗り込みながら研二は言った。
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