メリーゴーランド278

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「ほな、今夜は出前とろ? ずっと世話掛け取るし、俺が払うよって」
 結局何もかも研二にやらせているようで、千雪も気が引ける。
「俺は何の苦にもならんけど、たまにはええか?」
「鮨と鰻どっちがええ?」
「鮨がええな」
「よっしゃ」
 音楽は高校の時から変わっていないらしい。
 二人でよく聞いたストーンズやUKロックが車内に流れている。
 それにしても辻の選んだ車は乗り心地がよく、ドライブも快適だ。
「車にはそう文句はないんやけどな。左ハンドルがなあ」
 研二がぼやいた。
「何の支障もないやん?」
 フン、と研二は苦笑した。
 そのうち千雪はうとうとし始めた。
 研二はチラッと目をやり、ふうと息を吐く。
 千雪が部屋に来て一週間以上が過ぎた。
 無論、いつまでいてくれてもいいというのは研二の本音だ。
 世話を掛けさせられることなどそれこそ今さらだ。
 ただ、千雪が何も話さないので研二も聞いてはいない。
 京助と別れたと千雪は言ったが、果たして京助はどう思っているのかと。
 第一、別れた理由が、京助は千雪の父親である小林教授から上京する千雪のことを頼まれたから世話を焼いていた、千雪はそれに依存していた、などというのが引っ掛かる。
 確かに最初はそうだったかも知れないが、京助の千雪への思いがそんなことだけであるはずがない。
 京助と直接、千雪のことを話したのは、一昨年の春、京助が千雪と二人で京都に来た時だけだが、明らかに研二を牽制してきたのだ。
「研二くんは優しいんだな。大事なものは身を挺して守る。お前は親友の鏡みたいなやつだ。到底、俺にはマネできない。俺は欲しいものをただ指を銜えて眺めているなんてできやしないからな」
 さらに京助は言った。
「先に千雪を見限ったのはお前の方だろ? 今さらだよな?」
 京助の言葉は研二の中に燻っていた千雪への思いを再認識させた。
「けど、俺はいざとなったら、何もかも捨てる覚悟はとうにありますよって」
 研二に、思わずそんな言葉を返させた京助が、簡単に千雪を手離すとは思えないのだ。
 ただ、江美子のことでは千雪だけでなく、自分たち同級生のことまでも気にかけてくれていた。


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