当時京助が付き合っていた女生徒の親が東洋グループ傘下の企業の社員だったことで、京助の相手にふさわしくないなどという理由で、東洋商事社長の綱俊が勝手に海外に異動させたことを知った京助は、社長室に押し掛けて綱俊を殴ったのだ。
結局、その女生徒とはフェイドアウトで、未だに京助は綱俊に対して謝罪の言葉一つ告げていない。
今回は暴力ではないものの、京助が高校を卒業してすぐ家を出たことでもわかるように、周りは父親を含めて京助にとっては綱俊と同じ穴のムジナでしかないのだ。
瞬時にそんな状況判断をした紫紀だったが、マギーはどうして京助が怒ったのかわからず、戸惑いがちに立ち上がった。
「京助には千雪という相手がいるそうだよ」
日本語を勉強しているというバーニーがマギーに説明した。
パリで千雪と会っていたマギーはやっと状況を理解したようだが、「まあ、千雪さんと? そうだったの、あたしったら何も知らないで、ごめんなさい」と首を振った。
「全くあいつは、いい大人がどういう態度だ」
大長は大長で怒りを露わにした。
小夜子はその間、膝の上に手を組んだまま黙ってようすを見ていたが、次には紫紀が気づいて止める間もなく口を開いた。
「お義父様、もし京助さんと千雪ちゃんのことでお怒りということであれば、私、この結婚を続けていくことはできませんわ」
大長は今度こそ驚いて小夜子を見つめた。
「小夜子さん! ちょっと待って」
マギーは京助と千雪のことを家族に説明して、皆は皆でそうだったのかと神妙な顔をしているし、そろそろデザートをとやってきた藤原はちょうどこの状況に居合わせてどうしたものかと立ち竦んでいるし、紫紀は収拾がつかなくなりそうなこの場を何とかしないとと、珍しく焦って声を上げた。
「お父さんは京助の態度のことを怒っているわけで、千雪くんとのことをどうこう言いたいわけではないんですよ」
冷静に紫紀は説明したが、小夜子は把握しかねていた。
「お父さんも京助も、お互いに言葉がなさ過ぎます。お陰であちこちで齟齬が生じたじゃありませんか」
父親を諫めるようにきっぱりと口にした紫紀を、大長はムッとした顔で見つめた。
「先日、千雪くんも含めた食事会の時にはもう気づいていたんでしょう? お父さん」
すると大長は、「京助のやつが何も言わないのが悪いんだ」と拗ねたような言い方をして腕組みをする。
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