留学当時は、知り合った女の子を楽し気にマギーによく紹介していたのは京助だった。
京助としても、こんな時でなければ久しぶりに逢ったマギーやみんなに会えたことを素直に喜んだはずだ。
「いや………」
それだけ言うと京助は口を閉ざした。
場の雰囲気を損ねない言葉を選んで話すといった紫紀のような芸当は京助にはできないから、こういう時は黙っているに限ると自分でもわかっている。
「そうそう、ほら、いつだったかうちに連れてきたミリアム、あの子に久しぶりであったらすっかりきれいになっちゃって、しかも今、ロースクールに通ってるんですって。京助にまた逢いたいって言ってたわよ」
続けてマギーはそんなことを言った。
「そうそう、ミリアムと京助、結構いい線いってたよな」
バーニーが追随する。
「あら、そのお嬢さんと向こうで付き合ってらしたの? ぜひお会いしたいわね」
佐保子がにこにことそんなことを言って笑う。
いつもならそういった苦労のない科白は小夜子の専売特許のはずだが、今夜の小夜子は京助の精神状態が伝染したかのようにピリピリした気配をまとっていた。
紫紀もそれを察知していて滅多に表情に出さないはずが少し眉を顰めた。
「最近、また、妙なゴシップ記事を書きたてられていたな。いい加減浮ついた遊びはやめて、将来も考えてちゃんとした相手と付き合ったらどうだ?」
そこへ剣のある大長の言葉が飛んだ。
あ~あ、地雷を踏んだな、と紫紀が思ったのと京助がガタンと立ち上がったのとはほぼ同時だった。
「俺が付き合ってるのは千雪だ。あんたの考えるようないい加減な付き合いはしていないが、あんたの常識から外れるというのなら縁を切ってやる。無理に認めてもらおうとは思わない」
感情にまかせてというよりは、怜悧な物言いできっぱり言い放つと、失礼する、とばかりに京助は部屋を出て行ってしまった。
頑固で似たような性格をしているにもかかわらず、大長は京助を扱いきれていないとは、常々紫紀は思っていた。
もっとも昔からガキ大将的な存在で、しかも正義感は強く、誰であろうと非は非だと正面からぶつかるような京助に誰も何も言えなかったのは事実だ。
高校の時に京助が起こした事件は、企業内でも広く噂になり、未だもって休憩室の語り草らしい。
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