小草生月某日-10

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 真っ赤なバラが百本ほどもありそうな豪華な花束が入った箱が、机の半分ほどをも占めている。
 よもや京助がそんな真似をしたのだろうかと近づくと、誰にでも見えるようなメッセージカードが箱に貼り付けられていた。
『アイラブユー! 私の名探偵へ あなたのジュンより』
 あんのやろおおおおおおお! わざとこんなもん、送りつけよって!!!!!!
 ニタついている三田村の頭からにょっきり生えた角が、千雪には目に見えるような気がして、思わず机を拳でドンと叩いた。

 翌日の昼、またしても半徹夜でやっと調べたデータをまとめて午前中に宮島教授に提出した千雪は、呆けたように学食で玉子うどんをすすっていた。
「ったく、バレンタインとか、ほんま、やめてくれへんかな。少なくとも俺の周りでは」
 一つため息をつくと、千雪は呟いた。
 昨夜立て続けに宅配便が来て、京都の菊子と江美子の二人からチョコレートや皮の手袋、ニューヨークの桐島恵美から彼女の好きなモーツァルトのアルバムとチョコレート、それに日本橋の小夜子から手作りチョコレートケーキとセーターなどが届いたが、それらは少なくとも素直にありがとうと言えるものだった。
 だがおそらくこんなことを口にしたら世の男どもたちの怒りを買うこと必須だが、高校時代までのバレンタインデーといえば、千雪にとってもうやめてくれと叫びたくなるくらい、チョコレート攻めにあってきたのだ。
普段は隣に強面の研二がいるので近づいてこないはずが、バレンタインデーばかりは違っていた。


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