「はあ、理紗子はキャリアウーマンやから、そういう手作り弁当なんて、ちょっとも期待でけんけど、まあ、今夜のバレンタインディナーだけは仕事抜け出してきてくれるからええんやけど……」
「お前ってさあ」
さらに勝手に惚気てニヤついている佐久間を無視して、どんぶり飯を半分ほど食べた速水が口を開いた。
「昔っから部活でも面倒見よかったし、後輩に対しても彼女に対してもマメだとは思ってたんだが、お前のマメさって、実はカッコよさとは対極にあるよな? どっちかっていうと、母性愛?」
「何わけのわからん分析したはるんです?」
頬杖ついた佐久間が速水に顔を向ける。
「佐久間、お前の選択は正しかったな。検事やら裁判官やら弁護士やらになって世に出ても、それじゃ事件ひとつ解決できねぇ」
弁当を食べ終えると、京助は千雪の置いて行った茶をごくごく飲み干した。
「な、いきなり何ですの? いくら先輩でもそれって酷い言い草やないですか?」
「じゃな、今夜は教授のお供で大阪で学会だ」
いきり立つ佐久間には何も答えず、空になった重箱を袋に戻し、茶碗を手に立ち上がった京助は、苦々しさを隠そうともせずに学食を出て行った。
「まあ、一見してあれだけの男だ、バラの花束とともに高級車で迎えに来て、高級レストランでディナーのあとはホテルのスイートでロマンチックにバレンタインの夜を過ごす、なんてな夢を勝手に見ちまうんだよな、女は」
ブツブツ呟きながら速水はもそもそと残ったどんぶり飯を食べる。
「せやないんですか? 今夜は学会としてもきっと明日とか、あの真夜中の美人さんと」
「ある意味、割れ鍋に綴じ蓋ってやつかもな、あいつらって」
「そうなんでっか? 先輩、ここんとこ浮いた話ないし、やっぱ本命なんや」
佐久間は一人納得する。
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