速水は頷いた。
「あ、ひょっとしたら今日、告白されたんかも! とにかく手ぇのこんだ美味そうな弁当で……、それが、蓋開けた途端ハートマークやったもんやから、先輩そのまままた蓋して逃げてしもて!」
「あのヤロウ、食わずに行っちまったのか?」
ムスッとした顔で、京助は袋から取り出した二段重ねの大きな重箱を広げた。
「うっわ、京助先輩もまさか彼女の手作りでっか? いやどっかの仕出し弁当みたいに豪勢でんな」
重箱の一つには鶏そぼろと玉子そぼろ、炒めたピーマンに紅生姜が彩りよく詰められ、もう一つには、大根と里芋、シイタケに蕗などの煮物、ソーセージに玉子焼き、焼いた鮭、そしてミニトマトとブロッコリーなどが並んでいる。
これらは全て千雪の好みに合わせて作ったものなのだ。
以前実家でも、両親が離婚して双方とも海外勤務という甥の大に京助がキャラ弁を作ってやって異様に喜ばれたことがある。
いつも弁当を作っていたのは長年家事を取り仕切っているせつだが、たまたま風邪で寝込んでいたため、一緒に手伝いをしてくれている若手の洋子から、弁当なんか作れないどうしよう、と料理に関しては家でも定評があった京助にSOSが入ったのだ。
できた弁当にいたく感激した洋子は、それから弁当作りだけでなく料理の腕を磨いたらしい。
それゆえに京助のいら立ちの焦点はそこにある。
俺の作った弁当を食わずに行っただと?
「美味そうやなあ、やっぱあの真夜中の恋人さんでっしゃろ? ええ加減、紹介してくれはっても罰あたりませんやろ」
勝手なごたくを並べる佐久間と、呆けたように京助の弁当を凝視している速水を無視して、京助はガツガツと弁当を食べ始めた。
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