お正月8

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「そら、行かはるでしょ?」
「また、しょうもないこと企んでるんとちゃうやろな」
 その問いに笑ってごまかした三田村によれば、もう京都の連中には声をかけてみんな既に承諾済みらしい。
 全く、人に何の断りもなく、とは思うものの、またみんなに会えるのは嬉しい。
 京助に話すと、食料は行ってから調達すればいいな、とばかり既に三田村の期待通り腕を振るうつもりになっていた。
 まあ、子分を従えて、ああしろこうしろとやるのは好きなのだ、何せジャイアンだから。
 それにすごい料理でなくても、寿々屋で出された料理のレシピを女将から時々教えてもらったりして作ってくれるものは、本当に美味い。
 いつの間にか京助は正月飾りまで仕入れ、二人は両手に荷物を抱えながら帰途についた。
「細かいこと知ってんやなぁ」
 帰るなり、玄関から床の間から、正月飾りを一通りきっちり飾り付ける京助を後ろで腕組みをしながら千雪は感心してただ眺めている。
 父が亡くなってからは殆ど帰っていなかったし、正月に帰ってきたのは久方ぶりだ。
 生前も年末に倉永さん主導で大掃除をした際、正月飾りも全てやってくれていたらしい記憶はあった。
「玄関に花でもあれば完璧なんだが、へたくそな生け花をやるきはないからな」
「十分やろ。花なんて俺もわかれへんし」
 松竹梅の豪華な花も倉永さんが生けてくれていたことを思い出した。
「おう、これで正月がきてくれそうやな」
 その花を見て、父がそんなことを呟いていた。
 母が生きていた頃は、玄関だけでなくいつもかかさずどこかしらに花があった。
 それらのひとつひとつをどうして覚えていなかったのだろうと、千雪は悔しく思うことがある。
「先に風呂でも入ってろ」

 


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