お正月9

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 京助がキッチンで料理を始めると、千雪は言われた通り、バスタブに湯を張って、先に入ることにした。
 大晦日というより、久しぶりののんびりした時間に、湯の中でふっと肩の力を抜いた。
 本当は京助にしたって忙しいばかりの毎日だったはずなのだが、大抵いつもデリカテッセンなどで買ってきたものだけでは飽き足りないと、何品かはきっちり作ってくれる。
「ほんまに、出来すぎやな」
 千雪が風呂からあがると、美味そうな匂いがリビングまで漂っていた。
「すぐ上がるから、待ってろ」
 準備を整えたらしい京助は風呂へ向かった。
「どこで食べる?」
 タオルで髪を擦りながら、千雪は聞いた。
「居間でいいだろ」
「ほな、何用意しとったらええ?」
「皿と箸とぐい飲み、と徳利」
「わかった」
 スウェットとトレーナーに着替えてから、千雪はキッチンの食器棚から皿や徳利などを取り出した。
 ふいに、京助と二人でこんな風にこの家にいることが何やら不思議に思えてくる。
 自分がこの家にいることは何の不思議もないのだが、京助が何故ここにいるのだろうと。
 逆を言えば、上京してからというもの京助がいなければ、ここまで一人でやってこれたかどうか怪しいものだ。
 とっくに一人暮らしを返上して、おそらく原の家に厄介になっていた可能性が大だ。
 どちらにせよ、甘やかされているのは確かだろうが。
 京助が風呂からあがる頃には、聖護院大根を使ったぶり大根が少し冷めて味が染み、並べられた海老しんじょと大根の餡がとろりとして見るからに美味そうだ。
 ブロッコリー、人参、セロリなどをさっと茹でたサラダに、デリカテッセンで買ってきたきのこなどのマリネ、チキンを使ったリングイネなど、千雪が食べられないものはない。
 それに加えて、黒豆、栗きんとん、昆布巻き、蒲鉾、数の子、伊達巻、筑前炊き、レンコン、海老、テリーヌ、ローストビーフなど、小夜子が千雪に持たせたお節を並べるとまた豪華になる。
 買ってきた酒を熱燗にして、ようやく京助が座り、二人で酒を酌み交わした。

 


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