キレる寸前の千雪の態度に工藤や万里子がちょっと驚いたように千雪を見た。
「ほお? 結構生意気な口聞くじゃねーか、このガキ!」
どうやら流もすぐにカッとなる性分らしいい。
「つまらんケンカ、買うんやない」
その時言い返そうとした千雪を制した重く凄みの効いた声。
視線がその声の主に集まった。
研二は表情も変えずに静かに飲んでいる。
「何だあ!? このにーちゃんよぉ!!」
流は矛先を研二に向けるが、逆にジロリと研二に睨まれ、思わずたじろいだ。
「お前と遊ぶ暇はねえんだ、坊や、今夜は。またにしろ」
工藤はニヤリと笑う。
「All right! こえーニーチャンだぜ」
流はわざとらしく肩をすくめてみせて自分らの一団の方へと退散した。
「一緒に騒いだらええやんか」
千雪は面白くない顔を顕わにして、グラスをあける。
「あんなガキ相手に何突っ掛かってるんだ」
そういう京助の方が穏やかに見えるのが、工藤は面白がった。
「そうかて! 腹立つやんか!」
「自分の力も考えんと、すぐケンカ買うからあかんのんや、お前は」
今度はまた研二に諌められる。
「悪かったやんか、力のうて」
「わかっとんなら、つまらんことに首突っ込むんやない」
いちいち研二の言葉は重みと威厳がある。
口数が少ないだけ要点をついている。
成程、と工藤は納得する。
どうやらこの研二という男、なかなかの逸材のようじゃないか。
しかし京助と研二の間は一体どうなっているのだ?
京助は相変わらず不機嫌そうな顔をしている。
だがいつもの京助なら、千雪に対して他の男にそんな偉そうな口を聞かせているはずがないのだ。
「そういえば、新入社員、どないです?」
思い切りよく千雪は話を変える。
「新入社員…がどうしたって?」
一瞬工藤が戸惑いを見せたような気がして、千雪はおや、と思う。
「宮島教授からちょっと聞いたんですけど、後輩やて? 工藤さんとこ入ってくれる社員やなんて、千年に一度の逸材やない? イジメて逃げられんよう、気を付けたってくださいよ。逃げられよったらもう金輪際そんな奇特な人現れへんかもやし」
すると工藤はフン、と苦笑いする。
「私も気になってたのよ。こないだオフィス寄った時、新入社員くんに会えるかなって思ったけど、ずっとでずっぱりだって、鈴木さんが。こきつかって怒鳴りつけたりして逃げられないようにしてよね? やっと入ってくれた社員なのに」
万里子までが散々な言いようだ。
「は、今頃、逃げる算段してるんじゃねーのか?」
京助が鼻で笑ってグラスを空ける。
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