かぜをいたみ38

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 今度は、小夜子は無事出産することができるのだろうかとまで思ってしまい、怖くなる。
「おい、千雪、聞いてるか?」
「あ、ああ。それはおめでたい話やけど、俺はやっぱパスって伝えといて」
 千雪はそう言うと携帯を切ってしまった。
「何かあったんですか?」
 眉を顰めたままテーブルに戻った千雪に、木村が聞いた。
「ちょっと聞こえちゃったんですけど、パーティとか、私もあんまり行きたくない派なんです。さっき母親から、今夜新しいブランドのお披露目パーティがあるから私にも出ろって言って来て。私、とにかくそういう、これみよがしな派手な集まりとか大嫌いで、だから地味でもT大ならって思って行ったのに」
 渋い顔をしたまま千雪が黙っているので、木村は吐き出すように言った。
 千雪は苦笑して、どちらかというと目立つだろう目鼻立ちがはっきりした可愛い素の木村を見た。
「就活とかせえへんかったん?」
「そこが甘いんですよね~、涼香ちゃんみたいに、絶対アナウンサーになる、みたいな目標もないし、年末に大事なイベントがあるし、アルバイトでもやればいいかなんて思ってたから、母親が大学を出て何もしないとか許さないって言い出して、仕方なく母親の会社に」
「今日、仕事なかったん?」
「今日は会社の創立記念日で、夜にパーティがあるから、お休みだったんだけど」
「俺なんかも似たようなもんや。京助にはいつもお前は甘ちゃんだ、キャベツ一つの値段も知らんって言われとおるし」
「やっぱり、先生のランチって、京助さん手作りだったんだ?」
「京助て、体育会系のサンプルみたいなやつで、下級生の面倒見ええやろ」
「みたいですね、空手部の皆さんも頼りにしてるっていうか……」
 と言いかけて木村は、「ああ、でも先生は違うでしょ?」とまた真っ直ぐ睨むように千雪を見た。
「そうだ、先生に謝らなくちゃいけないと思っていたことがあるんです」
「俺に? 何も心当たりないけど?」
 千雪は小首を傾げて聞いた。
「お二人が留学する前、京助さんが事故で入院したことがあったでしょ? あの時、先生が駆け付けたのに、涼香ちゃん、私がついてるから帰っていいとかって言っちゃって、先生、すぐ帰っちゃうし、私どうしようって」
 意外なことを持ち出されて、千雪は少し戸惑った。
「いや、別に君が謝らなあかんようなことやないやろ。それに随分前のことやし」
「え、だって………」
 木村はちょっと口籠る。
「涼香ちゃんが京助さんを好きだっていうから、私、最初はうまく行くように応援してたんです。でもお二人がそうだってわかってから、何とか涼香ちゃんを諦めさせる方法ないかって思って、さり気なくやめた方がいいって」
「え、ちょ、待った、わかって、て、何が?」
 まさかと思いつつ千雪はきいた。

 


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