「それに第一、小夜ねえと紫紀さんと違ごて、俺らは結婚するとかなんとかいう話でもないし、いつ解消するか知れん関係やしな」
苦笑して千雪は付け加えた。
すると小夜子ははああ、と大仰な溜息をついた。
「どうしてそうやけっぱちみたいな方向へ行っちゃうのよ。まあ、かく言う私も、二年前京助さんがぶちまけて帰っっちゃった時、ついお義父さまに言っちゃったけどね、二人のこと認めないんなら結婚解消しますって」
「はあ?」
千雪は呆れて小夜子を見た。
「頼むから、小夜ねえ、俺らのことなんか持ち出して、自分の生活を壊すか知れんようなこと、ほんまにやめてほしい」
すると小夜子は、「ええ、紫紀さんが慌てて私とお義父さまの間に入ってとりなしてくれたわ」と言う。
「って言うか、紫紀さん、ひどいのよ。いざとなると、京助さん並みに短絡的だとかおっしゃるんだもの」
「それほんまのことやわ」
「でも、私だけじゃなく、お義父さまのことも窘めてらしたのよ、京助さんと千雪ちゃんのこと食事会の時にはもう気づいていたくせに、京助さんもお義父さまも言葉が足りないからお互いに誤解されるんだって」
「え? 気づいていたて……」
千雪は怪訝な顔をした。
「千雪ちゃん、お義父さまが千雪ちゃんに好意的じゃなかったって言ったでしょ、それ、違うのよ。お義父さま、実は千雪ちゃんが素顔で現れた時、驚いて動揺してらしたんですって」
「はあ?」
「あんまり夏緒叔母様にそっくりだから、まだ夏緒叔母様が結婚される前、九条の叔父様が叔母様をお義父さまに紹介した時のことが思い出されたらしくて。だから、千雪ちゃんにうまく話せなかったらしいのよ」
「ええ?」
それが本当なら、千雪が京助の父親によく思われていないというのは千雪の思い込みということになるが。
「京助さんも、ほら、さっきの千雪ちゃんみたいに、お義父さまは千雪ちゃんとのことを認めないに違いないって思い込んで、認めてもらおうとも思わないし、縁を切ってくれて結構だなんて言うから」
それを聞いて、千雪は思い切り嘆息した。
「お義父さまは、京助さんがちゃんと自分から話してくれるのを待ってただけみたいよ」
「だからと言うて、やっぱり俺は綾小路とは関係ないし、いろいろ聞かれるのもメンドイから食事会は……」
パスだと続けるつもりだった千雪の言葉を遮って、「だってもう、うちの親にも言っちゃったのよ」と小夜子が言った。
「は?」
今度こそ、千雪は目を丸くして絶句した。
「だってね、家に帰った途端、千雪ちゃんには誰か付き合っている人がいないならちょうどいい話があるだの、綾小路の方は京助さんもそろそろだしとか、グダグダ言い出したから、最初は千雪ちゃんも京助さんも付き合っている人がいるからって言ったのよ」
千雪は何も言わず小夜子の言葉を聞いていた。
「だったら連れてきて紹介するように言えとかなんとか、もう何だかいろいろあちこちで煩くて、つい、千雪ちゃんと京助さんが付き合ってるんだって……」
「……それで?」
「二人ともハトマメ状態」
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