「ああ。まだ学生に毛が生えたようなもんだしなあ」
マットレスの薄い簡易ベッド、布団一式、炬燵、炬燵布団、本は割と多いがそれでも段ボール三箱、衣類が三箱、その一つはユニフォームやグラブ、ボール、シューズ、キャップだ。
ポスターやバットは壁に立てかけてあり、片手鍋とマグカップ、皿などとキャットフードやこまごましたものが一箱、猫のトイレとベッド、かろうじてパイプハンガーがあるが、家具のないがらんとした部屋に全てがちんまりと収まっている。
俺の学生ン時よりミニマリストやなあ。
だが、そういえば、親が保証人倒れで一家離散したという話だから、それもあるんやろか。
「わしはそろそろ良太のアパートに戻って、確認と大家に鍵渡してこなけりゃならんが」
カーテンを掛け終えた平造が言った。
「行ってください。後は俺やっときますわ。この程度やったらすぐに終わりそうや」
もっと早う知りおうてたら、アパートで使こてた本棚とかくれたったのになあ。
アパートの家具などは、京助がリサイクル業者を呼んでひとまとめに売ってしまった。
たいした金にはならずとも、物を無駄にしないのが京助だ。
簡易ベッドは既に布団一式とともに壁際に設置してあり、パイプハンガーや炬燵は所在なく置いてある。
まず使っていたままに持ってこられた猫のトイレの位置を決め、ベッドを簡易ベッドのそばに置く。
おそらくテーブル替わりだろう炬燵を中心に置き、炬燵布団をとりあえずベッドの上に置くと、衣類を箱から取り出して、パイプハンガーにかけていく。
スーツ三着と冬用のコート、ワイシャツ三着を掛けるとパイプハンガーはいっぱいになった。
タオル類はバスルームの戸棚に入れ、炬燵布団もその横にちょうど入ったし、鍋やカップなどはキッチンの棚に置いたが、あとは箱から出しても入れるところがない。
「京助に、何か見繕って持ってきてもらうか」
そう呟いたものの、今日京助はモルグに籠ると言っていたのを思い出した。
「せや、通りに家具屋あったよな」
千雪はエレベーターで一階まで降りると、徒歩で歩ける距離にある家具屋に向かった。
なるべくあの部屋に違和感のない簡易なチェストと本棚にするための三段ボックスを購入してカードで支払いを済ませ、すぐに会社に運んでくれるように頼んだが、料金がかかりますよとあまり歓迎しないような顔をするので、言われた料金に上乗せして渡した。
するとたったか運んでくれた業者を見て、人間て、金を見せるとまさしく現金なもんや、と千雪はフンと笑う。
ブランドものらしく値は張ったが、ボックスもチェストもシンプルでパイプハンガーと何ら違和感がない。
千雪は後の衣類やユニフォーム、細々したものをチェストに収め、キャップやグラブ、ボールなどをチェストの上に置いた。
本はボックスに収まり、全て片付いた。
平造が掛けて行ったカーテンと夏物の絨毯は同系色のブルーグリーンで統一されている。
ビルトインのシステムキッチンにはオーブンや食洗機、コンロが組み込まれ、真新しいレンジフードは一度も使われていないことを示していた。
大型冷蔵庫や洗濯機も並び、バスルームは広く、これも使われた気配がない。
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