かぜをいたみ66

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「ちょうど今夜にぴったりのいいワインが手に入ったんだよ」
 最初に出てきた髭がボトルを手にグラスを四つテーブルに置いた。
「お、シャトー・ラフィット・ロートシルトじゃないか。確か昔パリで飲んだなあ」
 眼鏡が言った。
「君もおいで」
 オールバックが千雪の肩を抱くようにしてソファに座らせた。
 どう見ても三人は、このホテル新宿3に宿を取るような輩ではないと千雪は見ていた。
 そう詳しくはないが、ワインも値がはるものだろうし、彼らの着ているスーツはそんじょそこいらの吊るしではない。
 さらに立ち居振る舞いやワインの扱いなどからして、ヤのつく人種とは住む世界を異にする雰囲気だ。
「乾杯!」
 三人は千雪の手のグラスに自分のグラスをぶつけた。
「あれ。飲まないの?」
「俺、ワイン、嫌いやし」
 中にさっき何か入れたやろ。
 ちゃんと見えとるわ、あほ。
 すると、男たちは急にフランス語で話し始めた。
 千雪がわからないと思ったのか、それともいつもこうなのか。
 いずれにせよ、バイリンガルかトリリンガルか知らないが、語学堪能な社会的地位のある輩だ。
 男たちは上着を脱ぎながら、今夜は俺が最初にやる、じゃあ俺が次だ、などと笑いながら話している。
「それで? 仕事って何すんの?」
 わかっていても、千雪は一応口にしてみる。
「全然簡単だから。いい子にしていてくれれば」
 髭がそう言いながらいきなり千雪の腕を掴んでベッドへ向かう。
「おい、何すんね!」
 わかっていても一応大きな声で喚く。
 千雪が放り投げられたのはダブルベッドの上だ。
 う……、あんまり触りたくないぞ、こんなベッド。
 髭がズボンを後ろから降ろそうとするのを千雪は蹴りつけた。
「離せ! こんなん聞いてへんで!」
「おっと! まあ、ちょっとぐらい活きがいい方が楽しみも大きい」
 などと言いながら髭はまた千雪に向かってくる。
「だが、こないだの坊やみたいに大暴れして、逃げられたりしないようにな」
 ニタニタとオールバックが言いながら、千雪の足を掴もうとする。
「やめろ言うてるやろ!」
 千雪は大きな声で叫ぶ。
 オールバックの反対側に回った眼鏡が千雪のカットソーに手をかけた。
「離せ!」
 むやみやたらに腕を振り回した千雪の腕が眼鏡の顎に当たる。
「こいつ」
 怒った眼鏡が千雪のカットソーを引き裂いた。
「何てきれいな肌なんだ」
 千雪の胸に触ろうとした髭の手を千雪は跳ねのける。

 


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