だが今度は三人ともが欲に目が眩んでますという顔でわらわらと中年男が寄ってくるのを見た千雪は、反吐が出そうにキモいと、どこか冷静に見ていた。
「寄るな! クソキモいおっさんども!」
千雪は延ばしてくる腕を蹴散らして、真ん中のオールバックに頭突きをかませると、ベッドを飛び降りでドアに突進した。
だが狭い部屋で、すぐ追いつかれ、誰かに後ろから首を絞められた千雪は、思い切りその腕を引っ搔いた。
「ってええ、このガキ!」
男が一瞬怯んだその時、ドアの向こうでガチャガチャいう音がしたかと思うと、ガンっとドアが開きかけて、ドアガードで静止したものの、次にはドン!バキッバキッと派手な音とともに、ドアガードが壊れ、ドアが開いた。
「何やってんだ? てめーら!」
怒鳴り声とともにピザ屋の制服を着た男が仁王立ちになった。
「何だ、君は! こんなことをやっていいと思うのか!」
髭が言うのを、「俺はピザ屋だ。そっくりそのセリフ返すぜ!」とピザ屋の男は凄んだ。
「このオヤジどもが、三人で寄ってたかって俺に襲い掛かってきたんや! 警察、突き出してや!」
千雪はすかさずピザ屋の背後に回る。
傍らにホテルの受付にいた男がおどおどと立っているのが見えた。
「バカを言うな、その若いやつが我々を誘ってきたんだ」
「そうだ、我々はその男に唆されたんだ」
「冗談も休み休み言いたまえ」
三人三様に言い訳染みたセリフを吐きながら、上着を手に部屋を出て行こうとする。
「ウソつけや、このヒヒジジイども!」
千雪は男たちの行く手を阻む。
「ここに首絞められた痕あるし!」
髭が千雪のセリフにウっと一瞬立ち止まるが、「私ではない! …失礼する」とピザ屋の横をすり抜けようとした。
「待て待て待て待てい!」
ピザ屋が髭の腕をガシっと掴む。
「どうみたっててめーらが襲ったんだろうが」
「こっちは被害者だ! 離したまえ!」
精一杯見上げて言ってのける髭を、ピザ屋はその足を引っ掛けて感嘆に転がした。
「うわっ」
驚いたあとの二人は後ずさりした。
「何が被害者だ! 往生際が悪いんだよ!」
時代劇のヒーローのように景気よくピザ屋が啖呵を切る。
「あっ、俺、まちごうて、携帯ずっと録画になっとる」
ここで千雪が爆弾発言をした。
というか、男たちは千雪をどうにかしたいばかりで、千雪が首から下げていた携帯が作動していることにも気づかなかったわけだ。
ちょろすぎ! ほんまにアホや。
千雪が心の中で呟く間にも、腰を打って横たわる髭を放って逃げ出そうとした他の二人もピザ屋に軽く投げ倒された。
千雪が動画を再生して見せると、先ほどからの男たちの所業が逐一録画録音されている。
「貸してみろ」
ピザ屋は千雪から携帯を取り上げると、男たちに再生動画を突きつける。
「さあここで質問です。警察に突き出されるのと、SNSでこれを拡散されるのとどっちを選びますか? 二択です!」
ピザ屋はおどけて言った。
「やめてくれ! どっちも」
「冗談じゃない!」
口々に喚く男らを、「二択だっつったろうが!」とピザ屋が凄んで脅す。
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