「おい、あんた!」
ピザ屋は後ろを振り返ると、「こいつら、常連か?」と受付の男に聞いた。
「え、えっと………」
「常連かって聞いてんだよ!」
凄まれて受付の男は、「じょ、常連です!」と声を上げた。
「他にも連れこんでるんだな?」
「は、はい! 山本さんから………」
「山本? フン」
鼻で笑ったピザ屋は、「携帯出せ」と男たちに向かって言った。
男たちが躊躇っていると、「とっとと出せってんだよ! ネットに流していいんなら」と言いかけると、男たちはそそくさと携帯をポケットから出して差し出した。
「ロック解除しろ」
腰を抜かしたままの男がロックを解除した携帯をピザ屋は取り上げ、ざっと見ていたが、「てめーら、一歩でも動いたら、即刻拡散すっからな!」ととどめを刺すとドアを閉め、「おい、見張ってろ」と、受付の男と千雪に命令してエレベータに向かった。
その際、男たちの携帯を千雪は渡された。
間もなくサイレンの音がして、何人かの小難しい顔をした警官たちがエレベーターや階段からぞろぞろと上がってくるや、部屋の中にずかずかと入っていった。
「大丈夫ですか?」
ドアの前に突っ立っていた千雪に、女性刑事が尋ねた。
「クビ、閉められたんですよ、これ」
千雪はことさら大げさに首の痕を見せた。
「他に怪我は?」
「引っ掻かれたり、ぶつけたり」
「署でお話を伺いたいのですが、よろしいですか?」
「いいっすよ。こんな目に合うて、あのオッサンら、捕まえたってください」
目一杯情けなさそうに千雪は言った。
千雪と男たち、それにホテルの受付の男も連れて行かれたのは新宿西署だった。
「やから何回も言うてるやろ。ダチに聞いたバイト先に言ったら山本言う男がホテル連れてって、そしたら部屋に閉じ込められてあのオッサンらに襲われたて」
先ほどの女性刑事と一緒に千雪に再度話をさせたのは、年配の赤ら顔の刑事だ。
くたびれたスーツに年季の入った靴は擦り切れている。
所謂たたき上げというやつだろう刑事は、胡散臭そうな顔で千雪をジロジロ見ながら「具体的に、どんなことをされたんですか?」と聞いてくる。
相手が女子でもこんな聞き方すんのか? オッサン。
心の中で毒づきつつも「やから、服脱がさんと襲って来よって、蹴散らしたったけど、破れとるやろ?! それから後ろから首絞め寄って、ここ、痕ついとるやろ? 死ぬかと思うたわ!」と千雪は喚いた。
「せや、これ、携帯! 首にかけとったら誤操作で動画撮ってんねん」
それを聞いた刑事が携帯を見せろと言うので千雪が携帯を渡すと、再生を始めた。
録画は髭がピザ屋の横をすり抜けようとしたところで終わっていた。
「この人は誰です?」
「ああ、ピザ屋のにいさん?」
「どこの?」
「何か通りがかりの?」
「通りがかり???」
「受付のおっさんに聞いてみたらええんちゃう?」
しかし受付の男の答えからも「ピザ屋?」以外の情報は得られなかった。
「上の部屋が変だって鍵出せって凄まれて、でも、いつのまにかいなくなっちまって」
「おい、このピザ屋、探せ」
三人の男たちも、ピザ屋が入って来て乱暴されただの何だの文句を言っていたようだが、キャップを被った黒い手袋をしたピザ屋の制服のでかいピザ屋の男、しかわからなかった。
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