「Oh, I have no idea. I just came to the police because I was lost.」
千雪の答えに、「あ、すみません」と慌てたようすでペコリと頭を下げると、女性刑事はたったか署内へと戻っていった。
残念なことに、この手段を使うと大抵の日本人は退散してしまう。
英語教育の方法間違うとるわ。
刑事やろ、スニーカーとかももちょいチェックせんとあかんやろ。
同じスニーカーに同じパンツやで。
まあ、まず顔しかみてないわな。
おそらくあのたたき上げにみっちり怒鳴られるであろう女性刑事を少し気の毒に思いながらも、千雪は警察署から堂々と出てくると、やがて見えてきた地下鉄への階段を駆け下りた。
京助が入れたコーヒーの香りがリビングに漂っていた。
三つのマグカップにコーヒーを注ぎ、一つを千雪の前に、一つを客人の前に置くと、京助はひと口コーヒーを啜った。
「さっき中尾に聞いたら、新宿西署は今てんやわんやで、中尾は被害者に逃げられたことで、青島係長にこっぴどく叱られてへこんでたよ」
客人はそう言うと大きなため息をついた。
「俺は真相を明かすこともできないから、ほんと申し訳なくて中尾にも」
「渋谷さんは何も悪くないやないですか」
さらりと言う千雪を渋谷はちょっと眉を顰めて見つめた。
「全く! おとり捜査は違法だろう」
思わず激昂する渋谷に、「俺ら警察やないし、おとり捜査、なんて事実はあれへんでしょ?」と千雪は軽く反論する。
渋谷はウっと言葉に詰まる。
「しかし………」
「渋谷さんはただ、ホテル新宿3の五階で犯罪が行われてる、て新宿西署に電話しただけですやん。それもプライベート携帯やし」
「プライベート携帯だって、すぐ足がつくぞ!」
「足はつくでしょ? でも横須賀の『ピーターパン』の店長のとこまでや。木村は辻のダチの知り合いで、携帯がないって言うんで買ったばかりの携帯をくれてやった、だけやし、プリペイド携帯はそのダチの知り合いが木村のダチにくれた、ここでTHE END。探したかて木村も木村のダチもこの世に存在せえへんもん」
千雪はちょっと肩を竦める。
「ほんとに、千雪くん、どこにも証拠を残してないんだな?」
「やから、そんなドジせえへんて」
と言ってから、「まあ、万が一、バレても、ほら、俺って名探偵だし、ダチのために一肌脱いだって言うたら、マスコミも面白がるかも」などと千雪が言うので、「おい、千雪くん! 頼むよお!!」とさすがの警視庁捜査一課の刑事渋谷も泣きが入った。
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