かぜをいたみ71

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「中尾はさ、大学の後輩で、警察学校でも優秀な成績で将来を有望視されてる、超真面目なやつなんだ」
 はあ、とため息交じりに渋谷は語った。
「けど、優秀な警察やのに、何で俺の変装とかわかれへんかなあ。まあ、もじゃ頭で黒ぶちメガネでジャージ着てたら、全部、俺、や思うレベルやから、しゃあないか」
 千雪が昔の話を蒸し返して当てこすると、「勘弁してくれよ、千雪くん、ハハハ」と渋谷は空笑いする。
「それに、ピザ屋の方は大丈夫なのか?」
 と渋谷は京助を見た。
「さあ? 俺はカメラがないビルの駐車場で、『ピーターパン』の店長に貸りたトラックの箱にピザ屋の制服と一緒にバイクを収めて、帰ってきただけだし」
「それで? そのトラックは?」
「店長のダチが『ピーターパン』まで運んで、バイクは今頃、塗り直されてんじゃね?」
 それを聞くと、渋谷はまた、はあ、と大きくため息を吐く。
「それより、かなりヤバイぜ、やつら。一人くらい被害者が逃げたって、それまでの所業がクソだ」
 京助がノートパソコンを開いて、渋谷の前に置いた。
「ちょっと待った! これって、どうして見られてるんだ? 今、西署ではこれを巡って大騒動なんだぞ?!」
 パソコンの画面には動画が展開されていたが、それが捕まった男たち三人がこれまでに被害者を連れ込んで性的暴行を加えているところを撮影したものだった。
 三人のうちの一人が順に撮影しているたくさんの動画は、女性のみならず少年や制服の少女まであった。
「不同意性交等罪、小児性加害、児童買春、児童ポルノ他、ありとあらゆる罪名が出てくるわ。反吐が出る」
 千雪は冷たく言い放つ。
「確かにそうだ。だが、これ、何でこれを君ら見てるんだ?」
 渋谷はあらためて聞いた。
「店長のダチに、まあいわゆる、ハッキングが得意な奴がおって、おっさんらのクラウドにアクセスして、ダウンロードしたやつ? もう、きっぱりクラウドとは切れてるから安心してや」
「何が安心だ! そのハッカー、大丈夫なのか?」
「うーん、まあ、海外のサーバ経由して、足跡はきれいに消しとるみたいやから、大丈夫やない?」
「大丈夫やないって、千雪くん~! ってか、どうしてこんな動画をわざわざ」
「ちょっと、知り合いのダチが、被害におうたみたいやから、削除しとこ思たんやけど、探してもないみたいやから、動画撮られる前に、逃げ出したらしい」
 それを聞くと、渋谷も「え……、君ら、それでこんな」と合点がいったようだ。
「殴られたり首絞められよったり、ボロボロになって逃げてきたらしうて、許せへんかってん。あのクソオヤジども! 包帯ぐるぐる巻きで入院させられよったんやで!」
 千雪は怒りを露わにした。
「いや、確かに、わからないでもない、それは、友人が……、しかしまずそれなら警察に言ってだね」
 渋谷は真面目な顔で言った。

 


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