みんなはっぴぃ 16

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「藤堂さん、詮索はそのくらいにしてくださいよ。小林さんはうちの社長の大事な方なんですから」
 良太の答えに藤堂は益々納得できない。
 だって、工藤さんの大事な人ってのは、違うだろう?
「わかったよ。でも、名前くらい教えてくれてもいいのでは? 小林さんじゃ、どこの小林さんかわからないだろ?」
「だから、それは………」
「すみません、プライベートなので、今、名刺を持ち合わせていないんですが、小林千雪といいます」
 言いかけた良太の言葉を遮って、小林が答えた。
「え……?」
 藤堂は耳を疑う。
「ステキな名前ですねー、千雪さんか。そういや、小林千雪って、あの有名なミステリー作家と同姓同名ですねー。ほら、あの人、何とかって難しい名前の人と組んで、警察に協力していくつか難事件も解決してるってゆう。俺、あの作家の小説に出てくる老弁護士が好きなんですよぉ。知ってます? 藤堂さん」
 一瞬静まり返った車内に、のほほんとした浩輔の声が和やかに響く。
「プレゼント、このマフラーにしよか、おろしたてやし。な、良太」
「千雪さん……」
 こちらも呑気そうに聞かれ、良太は内心頭を抱える。
 うううううう、工藤、帰ってきたら、何て言えばいいんだ! 小林千雪の正体、藤堂さんにばれました、なんて!
 黒縁メガネでよれよれの中年推理作家として世の中に知られている小林千雪が、実は女性とも見紛う超のつく美人だと知ったのは、良太が青山プロダクションに入社して二年目のことだ。
 小林の作品は映画、ドラマ全て工藤を通して映像化されている。
 さらに、工藤も小林も良太にとってみれば学部の先輩にあたるし、事実、良太は小林の講義をとってもいたのだが、よもやその中身がつまり、今自分の隣に座っている見目麗しい関西弁の男だなんて、どうしたら想像できたろう。

 


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