信号で停まっていた車が一斉に動き出し、一瞬固まっていた藤堂は我に帰る。
その時、小林のポケットで携帯が鳴った。
「あ、すみません、ちょっと失礼」
小林は携帯を取り出してボタンを押す。
「…京助。まだ、かかりそうか。ほな、しゃーないやん。うん。俺もちょっと用できたよって、慌てんかてええわ」
京助!
無理やり、天然な浩輔の言葉を信じ込もうとした藤堂の考えがそのひとことで拒否される。
京助、って、あの綾小路京助のことか? 法医学研究室にいる、コースケちゃんが言った難しい名前の小林千雪の相棒…………。
つまり、世間で知られているあの風貌は隠れ蓑ってことか。
しかしまた何で隠す?
藤堂の中でまたしても疑問が広がる。
あれ? だが、なんで、さっき本名名乗ったんだ? ってか、俺が聞いたんだが………。
「千雪さん」
良太がボソリと小林に声をかける。
「何?」
「いいんですか? その……」
「ええよ。それよか楽しそうやん。なんか。どんなメンバーなん?」
「プラグインはうちとよく一緒に仕事してる代理店で、藤堂さんとコースケさん、代表の河崎さんと、営業の三浦さんの四人の会社なんですが、そこの仕事関係の人とか、友人、知人ですよ。去年はアスカさんもきたんだけど」
「まて…彼女もくるんか?」
小林はちょっと眉をひそめる。
「いや、今、彼女沖縄ロケ行ってるので大丈夫です」
「え、アスカさん、こられないんですか? 今年は」
するり、と浩輔が口をはさむ。
「ええ、ドラマの仕事があって」
良太が答える。
「そうか、彼女が来るとにぎやかなのに」
「…にぎやか過ぎるんやし…」
また、小林がボソリ。
お互いにアスカに引っ掻き回されているので、良太もくっくっと笑った。
back next top Novels