ACT 5
「さあ、着きましたよ。車を入れてくるから、コースケちゃん、お二人を先にご案内して」
「わかりましたー」
浩輔は小林と良太を連れてエントランスに入り、管理人室横にあるボードに暗証番号を入れる。
「はい、あ、どうぞ」
浩輔が名乗る前に、相手が画面で確認したらしく、すぐ、ドアが開いた。
エレベーターが十階に着くと、「すげーな。河崎さんとこもすごかったけど」と良太が感慨深げだ。
「下界と隔絶された空間やなー」
小林も頷く。
ドアの前でインターホーンを押すと、やがてドアが開いた。
「いらっしゃい! どうぞ、お入りください」
悦子がドアを開けてくれた。
一緒に駆け寄ってきたのは、元気なボーダーコリーだ。
しきりに尻尾を振って来客を歓迎しているようだ。
「かわええなー、名前、何?」
「あ、アイちゃんです」
「犬、好きなんですか?」
藤堂が戻ってきて、いつの間にかしゃがみこんで、アイちゃんとじゃれている小林に声をかけた。
「可愛いコですね。犬もネコも好きですよ。京助とこにもハスキーがいてるんやけど、ほんまは、俺が知り合いからもろたコやってんですわ。前のアパート、ペット飼えへんかったから、京助に預かってもろて、そのままなんですけど」
ようやく立ち上がり、小林がそういって微笑む。
笑うと、氷の美貌が和らいでいいじゃないか。
藤堂はこそっと思う。
アイちゃんはすっかり小林が気に入ったようで、付き従うように歩く。
と、コートを脱いでいた小林の足が止まる。
「あれ、この絵………」
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