ACT 10
エレヴェーターを降りると、エントランスの外に黒のフェラーリが停まっていた。
「どうぞ」
リアシートに自分が乗ろうとした小林を「あ、俺後ろでいいです」と良太が先にリアシートに乗り込んだ。
「後ろ、狭いで?」
「いえいえ全然平気です、よろしくお願いします」
良太はなるべく運転席の京助と目を合わせないように笑う。
まあ、二人ならカッコいい車かもだけど、実用性ゼロじゃん。
まだ工藤の車のがましだって。
もちろん心の声を京助に届けて睨まれるような真似はしない。
「こっちが死体やら内臓やらと格闘してる時に、楽しそうなこって」
小林が助手席に乗り込むなり、車を発車させた京助は皮肉りながら、ハンドルを切る。
「そら、可哀相にな。来年は仲間に入れてもろたらええやん」
「するか、んなもん。大体その藤堂ってな、何者だ?」
「青山プロダクションの仕事関係らしい。プラグインいう広告代理店の人やねんけど」
「らしい、って、よく知りもしねーで、行ったのか?」
「良太とかアスカさんもいてたし」
「アスカだと? 性懲りもなくお前をつけまわしやがって」
back next top Novels