よもや、追いかけてきてくれるかも、などと相手が思っているかも、なんてことは藤堂はこれっぽっちも考えなかった。
彼としては誰にでも、特に可愛いコには優しいし世話焼きでもある。
それに嘘はないが、特定の相手ではないことが、彼を河崎とは別の意味で不実に見せていた、なんてことは、どうもわかっていないのだ。
人のことはよく気づくのだが。
「ただいま」
悠の声がして、アイちゃんが飛び込んできた。
「お帰り。寒かったろう? 何か飲むかい?」
しきりと尻尾をふってご機嫌なアイちゃんを撫でながら、藤堂は悠に聞いた。
「何でもいい」
「じゃあ、紅茶にしよう。ちょっとブランデーをたらすと暖まる」
藤堂は湯を沸かし、ポットとティーカップを用意する。
日付はもう二十五日になっていた。
悠がジャケットやマフラーを自分の部屋に置いて出てくると、「そこに座って待ってなさい」と藤堂は言った。
「いい香りだ。さあ、どうぞ」
藤堂はソーサーごと悠に紅茶の入ったカップを渡した。
「ども…」
自分も悠の隣に腰をおろし、持っている紅茶を一口すする。
「うまいな」
「うん」
しばらく静寂が続く。
藤堂はどう切り出そうかと頭をめぐらしながらカップを傍の小さなテーブルに置くと、「悠ちゃん」とおもむろに切り出した。
「なんだよ」
相変わらず無愛想だ。
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