「お前そりゃ、タレントとは仕事上付き合うだろうし、あの人の仕事から考えて、美人じゃなくてもいい顔しなくちゃいけないこともあるさ。周りには女優やモデルやらわんさかいるんだ」
「悦子のこととかも気に入ってるんだ。それにジャストエージェンシーとかって会社の直子って女にもでれでれしやがって」
取引先の女の子だけではなく、男でも芸能プロダクションの広瀬良太などとは親しげで、「良太ちゃん」とか呼んでいるし、結局自分もそのうちの一人でしかないのだろう、と悠は思ってしまうのだ。
個展が終わってから頭の中に渦巻いていることを、ついつい高津にはきだした。
「ハル……。あのなあ、向こうは大人だし、男だから美人も好きだろうさ。だがよ、こうやって一緒に暮らしているお前とは比べることはできねーだろ?」
「……そんなの……」
「お前さ、本気で誰かとつきあったことないだろ? 今まで。終わっちまうことだっていくらもある。俺なんか、お前、たった、はち、く、じゅう、じゅういち、じゅうに………五ヵ月だぞぉ!!! うう、友美のやつぅ、合コンで見つけただとぉ? 商社マンが何だ!! チクショー!」
高津が恋人に振られ、クリスマスデートの予定だったレストランもキャンセルした、と悠に泣きついてきたのは先週のことだ。
イブに高津がこんなところでこんなことをしているのはそういう理由からだった。
指折り数えながらいつの間にか自分のことに話が摩り替わっている。
ちなみに悦子の場合、地方に赴任中の彼氏が東京に戻ってくるのは年末になるらしく、イブに一人でいるなんて寂しい、ということで、高津からこのパーティの話を聞いて手伝いにやってくるらしい。
億ション、というものに興味津々なのももちろん、ある。
「金に目がくらみやがって! 向こうはスイートを取ってくれたのよ、だと? スイートなんかくそくらえだ! バカヤロー!」
また振られた彼女のことを思い出して高津は吼えまくる。
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