サンタもたまには恋をする 17

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「おーや、時間ぴったりじゃないか、ガテンボーイ」
 窓際のテーブルにいた藤堂は、即座にノートを仕舞い、ウキウキ気分を抑えつつ、「ちょっと、上に行ってくる」と浩輔に告げてオフィスを出た。
 悠が現れたのは藤堂が銀河に上がってきてすぐだった。あれ、と藤堂が思ったのは印象がちょっと違っていたことだ。
「顔を洗ってきたね、感心感心」
 一層剣のあるまなざしを向ける悠は、ダボダボのズボンではなく、Tシャツの上に長袖のシャツを羽織り、学生らしくジーンズをはいている。
「うるさい! 俺は社長と話したくてきたんだ!」
 そこへ、奥の事務室から美保子が現れた。
「いらっしゃいませ。社長の和田と申します。五十嵐さんね? 学生さんかしら?」
「あっ…ども、初めまして。五十嵐悠、です。東京美術大学洋画科四年です」
 いきなり美人に声をかけられ、名刺を受け取ったものの、年配の男を想像していた悠はちょっと動揺している。
「まあ、はるかさん、っておっしゃるの? ご本人にお似合いな可愛いお名前だこと」
「は…いや、あの、作品撮ったデータ持ってきたんですけど」
 美保子ににっこり微笑まれ、悠はしどろもどろだ。ぎこちなく、美保子の向かいに腰を降ろした。
 ほんと、可愛いところもあるじゃないか。
 藤堂はそんな悠のようすを見て、くくっと笑う。
「じゃ、ちょっとお借りするよ、データ」
 藤堂は悠の持ってきたSDカードを持って奥の事務室に引っ込んだ。
 あれだけ大口を叩いた悠がいったいどんな絵を描くのか、藤堂としても大いに興味があった。
「……へえ………」
 画面に映し出された画像に、藤堂は思わず息をのむ。
 すごい、蒼、だな。
 ビルの屋上、その一角に立ち、大きく両手を広げた若者は今にも青空の中に吸い込まれそうだ。
「案外、ちゃんとしたものを描くじゃないか」
 何だろう、この、そこはかとなく湧き上がる切ないような感覚は。


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