サンタもたまには恋をする 16

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両親は同じ美大で知り合って結婚したが、女と酒に溺れてどうしようもない村松に愛想をつかし、悠が五歳の時、母親は悠を連れて実家に戻った。
悠の中で朧気な父親の記憶といえば一緒に絵を描いていたことくらいだ。
まだ祖父母が生きていた頃、家に遊びに来て村松の絵を見つけた高津以外に悠はこのことを話したことはない。
村松の息子だと知れて色眼鏡で見られるのが悠は嫌だったし、村松を親と思ったこともない。
村松とは別の場所で自分だけで勝負をしたかった。
「で、青山のどこだよ? ギャラリーって」
「前に神山先輩がやっただろ?」
「え、まさか銀河かよ? お前、高いぞ、あんなとこ」
驚いて高津は目を剥く。
「企画? にすれば、使用料はあとでいいっていうんだ。そだ、高津、携帯かデジカメ貸して」
「携帯?」
「あのギャラリーのおっさん、作品がわからなけりゃ、話できないなんて言いやがって」
「おまえ、それ、当然だろ」
出たとこ勝負で突っ走りやすい悠の性格を知る高津は、しょうがないな、と大きくため息をついた。


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