サンタもたまには恋をする 15

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「遠恋の彼氏、帰ってくるのか。わかった、世話んなったな」
 母親を中学生の時、昨年は相次いで祖父母を亡くし、天涯孤独になった悠は、それまで借りていた一軒家を出てアパートに移った。
 だがやがて蓄えも底をつき、家賃を五ヵ月もためて追い出された。
 それから悠は友達の家や大学に寝泊りして暮らしている。
「ったく、しゃーねーな。うちくるか」
 二人のやり取りを聞きつけて、高津が色のついた筆を突き出す。
「うわ、よせ、絵の具つく! 高津の部屋狭いじゃん。いいよ、ここで寝るし」
 悠はどうということのない顔で言う。
「夏じゃあるまいし、こんなとこで寝たら凍死すっぞ!」
「わかったよ、じゃあ、行ってやらあ」
「このやろ、お願いしますくらい言いやがれ」
 飯倉とのバトルを面白がろうと、クラスのみんなは、からだに似合わないガテンバイトまでやっている悠の事情を知っていて、気軽に食料や部屋を提供してくれるありがたい仲間たちだ。
「けどよ、お前、意地張ってねぇで、例の金、使ったら? 親父さんからの養育費、ばあちゃんたち貯めといてくれたんだろ? それに、今後のことも親父さんに相談してみるとか」
 ぼそっと高津が悠に言うのに、「ぜってー、いやだ!」と悠は聞く耳を持たない。
「頑固なんだからよ。野垂れ死にしたお前の骨なんか拾ってやらねぇからな、俺は」
 この高津は、悠の秘密を知っている唯一の人間でもある。
 秘密、というほど大仰なものではないが、悠の父親は現代日本画壇の巨匠といわれている村松幸蔵だ。

 


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