サンタもたまには恋をする 14

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 今までかつて、飯倉にたてついた学生は誰一人としていない。
「何だと?」
「先生、耳が悪くなるような年じゃないでしょうが」
 師を師とも思わぬ言い草に、飯倉の顔は見る見る怒りで赤くなった。
 こうして、飯倉と悠のバトルは以後、幾度となく繰り返されることとなったのだ。
「平べったいモチかな? これは」
「やったぁ、成功。実は先生、これは先生にだけ平べったいモチに見えるように描いたんです。だまし絵の一種ですね」
 実際、誰が見てもベンチにのびている猫を描いたものだが、悠の切り返しで、クラス中にクスクス笑いが広がる。
 途中でクラスを変わることもできない以上、卒業まで悠は飯倉のクラスで絵を描くことになるのだが、可愛い教え子であったはずの悠の絵を、飯倉はことごとくけなし始めた。
 地を這うような評価をもらったとしても、ああ言えばこう言う、減らず口だけは悠も負けてはいなかった。
卒業制作においても、当然のことながら悠は飯倉とぶつかった。
 テーマを考え、ラフを見せて、担当教授である飯倉のGOサインが出なければ制作にとりかかることができない。
「あんたに認めてもらわなくても結構だ。俺は俺だけの卒制をやる。世間をあっと言わせるようなやつを描いてみせる」
 何度もダメ出しをくらった悠は、みんなの前で飯倉にそう啖呵を切った。
 それから自分の卒業制作を発表できるギャラリーを探していたのである。
「あ、やっときた、ハルちゃん、ごめーん、実は今夜から彼氏がくるんだ。だから、他の誰かんとこ行ってくれない?」
 悠がアトリエに入るなり、面倒見のいい萩原悦子が駆け寄ってきて悠に両手を合わせる。

 


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