サンタもたまには恋をする 18

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 若い画学生の手によって具現化されたいくつかの情景に故もなく魅入られ、しばし藤堂は息をするのも忘れて画面を食い入るように見つめた。
 今まで数々のアーティストの作品を見てきた藤堂だが、その中でも悠の技術が群を抜いていることは一目瞭然だ。
悠の絵は難解な抽象でも、稚拙な技術を露呈するものでもない。
 見事なまでに三次元を平面に映し出す目を悠は持っていた。
 無論、絵は技術だけでは見る者に何も訴えないが、悠の絵には技術以上に藤堂の惹かれるものがあった。
 それは色なのかマチエールなのか、描かれた被写体なのか、或いは情景からくるものなのか、とにかく何かが心に引っかかる。
 早く実物が見たいな。
「あら、とてもステキだわ。このモデルはあなたご自身?」
 美保子も藤堂が持ってきたタブレットの画像を見るや、たちまち気に入ったようだ。
「テーマは何?」
「テーマって、あんまり考えてなくて」
 藤堂の質問ににべもなく答える悠に、藤堂は苦笑する。
 タイトルも「作品1」「作品2」と具体的な説明もない。昨今の、作品以上に雄弁なアーティストたちとは対照的だ。
「しいて言うなら、蒼」
「蒼?」
 藤堂は悠の言葉から、青でなく蒼の文字を連想した。この深みを表すなら、蒼、だろう。
「じゃあ、十二月の第一週の金曜日からでよろしいわね」
 美保子はもうすっかりその気になっている。
「では木曜日に搬入、翌週の水曜、五時以降に搬出ということでいいね。もう一ヵ月もないが、作品はもう準備ができているのかな?」

 


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