「俺を慰めてくれるのはアイちゃんだけかぁ」
藤堂はまた虚しく呟き、トボトボと歩き出すのだった。
「おい、ボウズ!」
唐突に大きな声がした。
藤堂は足を止めた。
通りの先が道路工事現場になっている、その辺りからだ。
「こら、大丈夫か?」
工事用の照明がやけに眩しい。
「まあた、倒れやがった」
「ほっとけ!」
無責任な言葉を聞きつけてムッとした藤堂がつかつかと近寄っていくと、そこに痩せぎすな若い男が倒れている。
「おい、ほっといていいわけないだろう! 救急車!」
藤堂はポケットから携帯を取り出して救急車を呼ぼうとした。
「腹減ってるだけだ」
「食っとけって言ったのに食わねぇからだ。迷惑してるのはこっちだ」
いかつい男たちが口々に言う。
「うう~」
倒れている男が呻いた。
「おい、君、大丈夫か?」
半信半疑で藤堂は長身をかがめて男の顔を覗きこみ、声をかけてみる。
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