「…うう……はら…減った~……」
藤堂は、おいおい、と脱力した。
「こんなハードな仕事をやるのに、食べないでやろうなんてのが大間違いだ」
立ち上がろうとして、藤堂は手に持っているシュークリームに気づいた。
「よかったら……、食べるかい?」
「へ?」
倒れていた男は勢いよく半身を起こすと、差し出された袋からそそくさと箱を取り出した。
「シュークリームだけ……ど……」
藤堂が説明し終える前に、男はシュークリームを両手にがつがつと食べ始めている。
呆気にとられて藤堂が見ている前で、男はあっという間にシュークリーム六個を平らげてしまった。
「シュークリームかー。おにぎりの方がよかったな。ちっと胸焼けがするが、何とか動けら。ありがとよ、おっさん」
よっこらしょ、と立ち上がった男は、ふらふらと現場に戻っていく。
「おい、君」
「へ?」
振り返った男に、藤堂は花束をつきつける。
「なんだよ? これ」
うっかり受け取った男は怪訝そうに藤堂を見た。
「おお、なんと、労働する男にはバラがよく似合う!」
「おい、おっさん!」
藤堂は花束とシュークリームを手放し、花束を抱えてぼんやり立つ男に手を振りながら、とりあえずすっきりとした心地で家路についたのだった。
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