サンタもたまには恋をする 23

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 代官山、という聞きなれた地名に何気なく画面を見ていた藤堂は思わず目を見開く。
「藤堂さん! まさか、…………!」
「………アイちゃん………!!」
 叫ぶが早いか藤堂はオフィスを飛び出した。
 火が出ている建物は、それこそ見慣れた自分の部屋があるマンションだった。
 スタジオが地下だったせいだろう、携帯の留守電に管理人からの伝言が何件か入っていたのにたった今気づいたが、こちらから電話をかけてみても全くつながらない。
「俺も行きます!」
 イライラと何度も携帯の画面をスクロールしながら藤堂が駐車場から車を出すと、浩輔が追いかけてきて、サイドシートに乗り込んだ。
 ダークブルーのプジョーは、いつにないスピードで青山通りを疾走した。
 駆けつけたマンションの前は黒山の人だかりで、時折サイレンが不気味に鳴り響く。
 あたり一面にいろんなものが焼け焦げた臭いが入り混じって充満している。
「アイちゃん! アイちゃん!! どいてくれ! アイちゃんが中にいるんだ!」
 マンションに入ろうとして消防署員にとめられた藤堂は必死で怒鳴る。
 火は消し止められていたが、快適で優雅な我が家のあった建物は、見るも無残な姿に変わり果てていた。
「今は入れません。入居者の方ですか!?」
「そうだ! どけって言ってるだろ!」
 消防署員を突き飛ばして尚も中に進もうとした藤堂の耳に、遠くの方から、キャン! と犬の鳴き声が聞こえた。
「藤堂さん、あの声!」
 今にも暴走しそうな藤堂の後ろに、心配そうな顔でくっついていた浩輔が声のする方を振り返る。
「………アイちゃん!!」
 コロコロと転がるように駆け寄ってきた愛犬を、藤堂はぎゅうっと抱きしめた。
 火事で着の身着のまま焼け出された藤堂は、しばらく愛犬アイちゃんと一緒に河崎の家に転がり込んでいた。

 


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