サンタもたまには恋をする 25

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 大学の構内は夜九時を過ぎると暖房も消え、十一月ともなればぐんと冷え込む。
 卒業制作のために泊り込む学生もいるが、完全防備で向かわねば寝込むことになりかねない。
 だが悠にとって、今は大学のアトリエだけが制作の場所だった。
 暑かろうが寒かろうがかまっていられないのだが、アパートを追い出された上に、服も本も家財道具も売れるものはあらかたリサイクルショップに売ってしまった。
 リュック一つでどこへでも動けるから身軽といえば身軽だ。
 夜はバイトで明け方高津の部屋に戻って昼まで眠り、午後からアトリエに来て描いているのだが、作品展までにまだ何枚か仕上げるつもりだ。
 バイトがない日は一昼夜描き続けている。
「バイトなんかやってらんないなんて、わかってんだよ、チクショー」
 藤堂の言葉を思い出すとまた腹が立つ。
 わかってはいるのだが、ギャラリーの使用料や画材代を稼ぐにはバイトをやらざるを得ない。
「メシ代切り詰めても、ビビたるもんだしな」
 それにまたバイト先で倒れたりしたら、主任にどやされる。
 どころかクビにだってなりかねない。
 絵に没頭していると、いつの間にかもうバイトの時間が迫っていた。
「おい、顔色、青いぞ、ハル、大丈夫か?」
 夕方になってからアトリエに現れた高津が、悠の顔を覗き込む。
「平気。さっきカップ麺食ったし。やべ、時間ない」
 悠は筆や絵の具を片づけもせず、リュックを引っ掛けてアトリエを飛び出した。
「ハルちゃん、バイト行ったの? あんなヘロヘロで」
 悠とすれ違った悦子が心配そうな顔でアトリエに入ってくる。
「だよなー。あいつ、無茶ばっかしやがる」
 オブジェを前にペインティングの用意をしながら、高津は首を振る。
「携帯鳴ってるよ、高津」
 悦子に言われて慌てて筆を置き、高津はポケットから携帯を取り出した。

 


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