キュンキュウンと、聞き慣れない声が耳元でする。
あれ、ここ、どこだ?
がばっと飛び起きた悠は、目の前がくらついてまたベッドに倒れ込む。
高津の部屋にしては違和感がある。
「どうだい? 気分は」
再び目をあけた時、やっと藤堂に気づいた。
「あんた…なんで……?」
「おかゆを作ってみたんだ。少し食べてみるかい?」
トレーの上で湯気をたてているおかゆを見ると、藤堂の言葉を最後まで待たず、悠は起き上がって食べ始めた。
一人用の土鍋も、梅干も、電気ポットや食料品と一緒に藤堂が慌ててさっき買ってきたものである。
火事にあったマンションは未だ手つかずのままだ。
食器類などはかろうじて使えそうだが、取ってくる暇もない。
奥の寝室に何とかベッドは調達したものの、あとは紙袋に入ったままの下着類や河崎からもらったスーツとシャツが十着ほどパイプハンガーにかかっているきりだ。
リビングには、アイちゃんグッズとフローリングの床にじかに置かれたノートパソコンがあるだけで、ガランと無闇に広く見える。
きれいにかゆを平らげた悠は、ようやく藤堂に向き直った。
「で、なんで俺、こんなとこにいるんだ?」
藤堂はついつい失笑する。
とりあえず食べてからというおおらかさがいつもながらいい。
「ポスターや案内状の初校が出たから君に見てもらおうと思って高津くんの携帯にかけたんだ。バイトだって聞いて行ってみたらまた君が倒れたんだよ。しかも熱があったんだ…」
どれ、と藤堂が悠の額に手を当てる。
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