サンタもたまには恋をする 35

back  next  top  Novels


「義行、冷蔵庫、いらない? どうも色がねぇ気に食わないんだ。今度持ってったげる」
 藤堂にとっては有難い申し出だったが、さやかは一年も使っていないという冷蔵庫を運んできた運送業者と一緒に藤堂のアパートまでやってきて、「あら、この子、クローンじゃないわよね」などとアイちゃんを見て険のある台詞を軽く口にする腹立たしい女だ。
 まあ、さやかのことなどどうでもいい。
 追い詰めるつもりはなかったんだよ、悠ちゃん。
 高津の部屋で寝込んでいると聞いてから一週間、ずっと連絡がない。
 まだよくならないのだろうかと心配で、高津の部屋へ見舞いに行ってみようかとさえ思ったのだが、やはり自分が出て行ってまた容態を悪化させてしまってはと思うと、それもできないのである。
 バイトを辞めさせたのも、悠の身体のことを思ってのことだし、ビジネス云々とまくしたてたのも、悠の意識を促すためだったのだが、それが裏目に出たらしい。
 素直に受け取っちゃってたからな。
 この業界にいると、いろいろと小細工ばかりの言葉に慣れてしまっているから、手加減なく口にしてしまった。
 ふうーーと藤堂はまた一つため息をついた。
 

 藤堂の意気消沈振りがわかるのか、アイちゃんも散歩の途中で何度も、くう、と主人の顔を見上げた。
 煌煌と丸い月があたりを青く照らしている。
 月夜の散歩の時は藤堂の機嫌がよかっただけに、ここのところ月がきれいだろうと星が瞬いていようと、藤堂の肩が落ちているのは、アイちゃんとしてもあまり楽しくないし、気になるところなのだろう。
 閑静な世田谷の一角に建つ、古びた二階建てのアパート。
 その一階が今の藤堂の住まいなのだが、相変わらず家財道具はあまり増えていない。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ