サンタもたまには恋をする 36

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 小さな木製の門をくぐったとたん、アイちゃんがキュワン、と鳴いて駆け出した。
「どした、アイちゃん……え……」
 ドアの前に丸くなっていた黒い影が立ち上がるのを見て、藤堂は目を疑った。
「悠…ちゃん?!」
「遅い! 一時間も待った」
 横柄なその口調を耳にすると、藤堂のもやもやは一気に吹っ飛んだ。
「この寒いのにどうしたんだ? 急に。ささ、入りなさい。あ、コーヒー、入れるね。こないだやっと買ってきたんだ、サーバーとフィルター。オーブンレンジも買ったんだよ。やっぱ必需品だね、何でもすぐ温められるし」
 エアコンを入れてお湯を沸かし、ドーナツとおまけでもらったカップを用意しながら、藤堂は饒舌になる。
 家具がないので、二人ともリビングの床に座り込んでコーヒーをすする。
「あのさ、頼みがあって」
 リュックを降ろし、無言でドーナツを二つ食べ終えると、悠は徐に口を開いた。
「何だい? あらたまって」
「しばらく、ここにおいてもらたいんだ」
 意外な申し出である。
 藤堂は即答せず、悠を見つめた。
「そんな義理じゃないのはわかってる。でも、俺ほかに思いつかなくて。アパート借りるカネも今んとこないし。あの、掃除でも洗濯でも何でもしますから、お願いします」
 いつもの生意気な態度はどこへやら、悠は床に両手をついて頭を下げる。
「それは別にかまわないけど、バイト辞めろと言った責任もあるし」
「ほんと?」
 顔を上げた悠の笑顔の可愛さを見たら、誰でもダメなどとは言えまい、と藤堂は思う。

 


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