大学のアトリエに置いていた絵は、藤堂が手配した業者と一緒に悠が部屋に運び込んだ。
すっかりアトリエと化したリビングを見回して藤堂は満足げに頷き、早速絵に取り掛かる悠を微笑ましく見守った。
思いがけない同居人の出現で、藤堂の生活は一変した。
毎日が楽しくて仕方がない。
「うーん、誰かと暮らすのもいいもんだなー」
オフィスでいきなりの発言に、浩輔は思わず飛び上がった。
「って、藤堂さん、ついに結婚?」
「まさか。いや、ちょっとね」
にたにた笑う藤堂を、浩輔が訝しげに見つめる。
「……同棲、ですか?」
「いや、女の子とじゃないから」
「……って、男の子と? まさか?!」
「悠ちゃんだよ。部屋無くて大学のアトリエで寝泊まりしてって言うからね」
「ああ、今度個展やる学生? なーんだ、びっくりした」
そう、男の子なんだからな、悠は。
ウン…男の子なんだけどな……
藤堂は心の奥に見え隠れするものを、とりあえずおいておくことにした。
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