サンタもたまには恋をする 40

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 海………?
 真夜中、藤堂が部屋に戻ってくると、リビングに突然海が出現していた。
 たゆたう波は穏やかだが、今にもこちらにうち寄せてきそうだ。
 手前の砂浜に、二人の人間が横たわり、その近くに海を見つめるアイちゃんが座っている。
 え…、と藤堂は思わず足元で尻尾を振っているアイちゃんに目を移して見比べてしまう。
 半端ではない表現力だけに、リアルで不可思議な空間を創り出している。
 日常にはついぞ見られない情景だが、二人の顔の表情も犬さえも笑っているように穏やかだ。
 部屋の中に海への入り口を創った本人は、傍のソファベッドで眠っていた。
 根を詰めたのか、筆や絵の具を放り出したまま、あどけない寝顔を見せている。
 藤堂はそっと毛布をかけ、しばし無防備な悠の寝顔を見つめていたが、灯りを消して寝室のドアを閉めた。
 サンルーム風なリビングを、悠は随分気に入ったようである。
 絵に夢中になると、ものも食べずに一心不乱に、壁の半分ほどもある大きなカンバスに絵の具を塗りつけている。
 そんな悠が健気で、翌日藤堂は早々に部屋に戻ると料理に取り掛かった。
「できたぞ、ビーフシチュー」
 悠は再びアイちゃんをモチーフに随分デッサンを取っていたが、どうやら構想も固まったらしく、新しいカンバスに取り掛かっていた。
 何枚かの制作を交互に進めている。
「うまそー! いっただきますー」
 手も洗わずに座って早速スプーンを取った悠に、藤堂が待ったをかける。
「手を洗ってからって、幼稚園で習わなかったか?」
「へーい」
 唇をへの字に、悠がキッチンで手を洗う。

 


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