どおりでエリートの匂いがすると思ってた。
だから何だって? 何で俺があいつのことでイチイチ動揺しなくちゃいけないんだよ!
冗談じゃねー…
唐突に、藤堂の指が唇に触れた記憶が蘇る。
あの時、思わずからだが震えてしまった。
驚いたからだと、自分に言い聞かせていた。
「あー、うるさいうるさい、散れ!」
抑えようとすると余計に血液が騒ぎ出す。
藤堂が自分にだけ優しいわけではないことはわかっているはずだ。
藤堂に恋人がいたからって、どうでもいいことじゃん。
俺には関係ねーじゃん。
だいたい、俺、男だし。
そう思いながらも、心の中でまた新たな不安がトグロを巻く。
「なんだよ! どうしたんだよ、俺!」
カンバスの前に座ってもちっとも絵は進まなくなった。
次の日も同じで、悠はぼんやりと、リビングの真ん中に座っていた。
藤堂は一週間の出張だと言っていた。
どことは聞かなかったが、海外に違いない。
いや、部屋にいていいと言った手前、厄介な居候を無碍にもできず、今頃、彼女と羽を伸ばしているのかもしれない。
そうか。
そうだよな。
夕方になるとアイちゃんがキュウンと散歩の催促をする。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
