サンタもたまには恋をする 51

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 仕事は移動が多くてハードだったこともあって、今回はかなり疲れた。
 けれど悠の顔を早く見たくて、急いで帰ってきたのだが。
 疲労のお陰で厄介な感情に悩む前に、やがて睡魔が襲ってきて、そのまま藤堂はアイちゃんと一緒にソファで眠ってしまった。
 明日は搬入という日まで、仕事だ、出張だ、と藤堂は部屋に落ち着くことがなかった。
 だから、藤堂が家に戻ってきた日以来、悠は藤堂とまともに顔を合わせていない。
 藤堂が手配した食事だけはデリバリーで届けられた。
 アイちゃんも誰かに預けようかとまで藤堂は電話で言ってきたが、モデルになってもらっているし、散歩は気分転換になるからと悠は答えた。
 藤堂がいない上に、アイちゃんまでいなくなったら寂しすぎる。
 だが、藤堂がいない方がいいか、とも思う。
 ずっと一緒にいたら、何を言ってしまうかわからない。
 決まらなかった最後の一点はあの日、藤堂がパリから帰ってきた夜、自然に決まった。
 あれだけ描けなかったのに、すいすい絵筆が動く。
 結局そのまま、最後の作品になった。
 描きかけの絵には白い布をかけていたので、おそらく藤堂はその作品を見ていないだろう。
 でも明日は、絶対見る。
 その時、藤堂は何て言うだろう。
 俺の気持ちがばれてしまうかもしれない。
 そしたら、もう、この部屋は出て行かなくちゃいけないかも。
 搬入の日も、業者を手配しただけで藤堂は部屋に帰ってこなかった。
 実は、藤堂は葛藤していたのだ。

 


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