「知らなかったの? 義行の家は『ライラック』の創始者一族よ。彼のオヤジさんが、今社長のはずよ」
「え………」
がっかりしたような、寂しいような気持ちがない交ぜになって悠の心を支配する。
なんだ、心配して損した。
火事で焼け出されたっていうから、俺と似たような境遇だなんて、勝手に思い込んでた。
俺を可哀相に思って、買ってくれたんだ。
こんな絵、やっぱり、そうだよな……
けど、マミって誰だよ! 美香とか直ちゃんとか、それから………ああああああ、もう、嫌だ! わけ、わかんねぇよ!
悠の頭の中はぐるぐると壊れそうだった。
「あ、おい、ハル、俺ら帰るわ、そろそろ」
高津が言った。
「高津、待って」
腕を掴まれた高津が振り返る。
「あ?」
「俺も行く」
何だか、もう、どうでもいい。
違う、ここは俺のいるところじゃない。
「無性に、飲みたい気分」
「いいのか? 主役が抜け出しても」
「いんだよ」
高津や悦子と一緒に、こっそり階段を使って、悠はギャラリーを抜け出した。
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