その夜、九時ちょっと前にようやく息せき切って帰ってきた藤堂は、両手一杯、ケーキやらシャンパンやらを抱えていた。
「遅くなってゴメン!」
馴染みのシェフに頼んで作ってもらったというディナーは早くにデリバリーされていた。
きのこや海の幸を使ったアンティパスト、旬の野菜のサラダに柔らかい肉の煮込み料理などをテーブルにセッティングして、悠は藤堂を待っていた。
「それでは、悠ちゃん、作品展、お疲れ様でした!」
藤堂はご機嫌でシャンパンの栓を抜いた。
ポーンととんだ栓が、悠のグラスに見事着地し、悠も久しぶりに笑った。
アイちゃんも大好きな骨をもらって満足したようだ。
最後に楽しく過そう、そして、今までありがとうございました、ときちんと礼を言おう。
悠はそう考えていた。
そんなに、飲むはずではなかった。
ましてや、藤堂に絡んでそんなことまで言うつもりはもうとうなかったのに。
「あんたや、あんたののつてで絵、買ってもらったって、嬉しくもなんともない。俺は俺で勝負するんだ!」
気がついたらそんなことを口走っていた。
「つてがあっても、絵がよくなかったら、誰も買わないよ」
藤堂は優しい言葉をくれる。
「う…さい! 大体、俺はあんたのことを誤解してた。こんなとこに、人からのもらいもんで暮らしてるから、てっきり金もないんだって同情してたのに、実は大会社の社長一族なんだってな! 俺は、俺は金持ちなんか、でぇ嫌いなんだよぉ!」
悠は、手酌でシャンパンをグラスに注ぐ。
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