研修はスタジオで撮影が続いた。
検挙率の高い十三分署内で裏で被害者を食い物にしている刑事がいるという内部告発により、主演である組織犯罪対策課の刑事が密かに内偵するという内容だ。
大がかりなギャング組織の手入れが行われ、押収された大量のヘロインがごっそりなくなり、組織犯罪対策課と合同で手入れを行った十三分署の刑事の中にヘロインを横流しした者がいるという匿名のタレこみがあったため内偵に入るがなかなか尻尾を出さなかったため、わなをかけて容疑者を追い込むというようなやり取りが撮影された。
俳優陣の演技もリアルで凄みもあったが、撮影後のミーティングで、良太と会社側のプロデューサーとの間でちょっとした口論になった。
「あのシーンは暴力過多だと思います」
良太が言えば、プロデューサーのグイードが声を荒げる。
「もともと、ドミニクは手が早いキャラだ。しかもここはペリー刑事のせいで未成年の少女がクスリの犠牲になったのがドミニクを助長させているってところだ」
「それはわかります。ペリーをまるでサンドバッグみたいに殴るってのも理解しないではないですが、暴力過多ではないかと」
結局二人の意見は平行線のままで終わった。
「何かあった? 今日はやたらつっかかってた」
ランチで外に出た良太とジミーが聞いた。
「ああ、まあ、自分の意見には責任を持とうと思ってさ」
「なんか、てこでもひかないって感じだったぞ」
良太は笑った。
実を言えばてこでもひかないぞ、と思っているのは別のところにあったのだ。
翌日、東洋商事のミーティングが控えていた。
良太は宮下にCM出演をごり押しされようと絶対ひかないぞ、という覚悟で向かうつもりだ。
実際、ニューヨークに来てから、自分の意見をぐいぐい推すメンツばかりの中で、良太も鍛えられた。
もちろんなんでもかんでも押し通せばいいというものではないのもわかっているが。
「わからないでもないよ。良太の言ってること。確かにあのシーンは過激だからね、下手するとあちこちからクレームがつく」
「それを覚悟でグイードは進めてるってのもわかるけどね。ただ、三回殴らなくても二回でもいいじゃないかって。たいして違いはないかも知れないけど、画面を見てる側としては三回も見せられたくないかもしれないだろ?」
ジミーは頷いた。
「良太はすごく、繊細なところに目が行くよね」
会社のエントランスで偶然グイードと出くわした。
「何か、すごい熱量だよな、良太」
言葉を掛けずにやり過ごそうとした良太に、グイードが口を開いた。
「根負けしたよ。確かに、もう一度モニターを見てみたら、三回目殴られたとこで、思わずうってなった」
グイードは首を横に振った。
「視聴者の印象が変わるな」
そう言ってグイードは外に出て行った。
「すごいな、あの自信家のグイードに根負けさせたぞ、良太」
エレベーターに乗った途端、ジミーが嬉しそうに言った。
良太は苦笑したが、あのおばさん、グイードよりも上手な気がするし、と不安がよぎるのを感じた。
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