その夜、良太は佐々木と連絡を取り、翌日の東洋商事のミーティングの打ち合わせをしたのだが、ちょうど二人で食事のあとお茶をしていたらしく、直子が割り込んだ。
「聞いたよ。良太ちゃんも沢村っちと一緒にCM出ることになったんだって?」
楽し気な直子の顔を見ながら、良太はえっとばかりに一瞬言葉がでてこなかった。
「え、待って、それ、何で直ちゃん知ってるの?」
「さっき藤堂ちゃんからテンション爆上がりで連絡あったよ。良太ちゃんもCM出ることになった、って」
「藤堂さんから?」
「こっち着いたばっかでこれから河崎さんのアパートに向かうって」
プラグインの藤堂は、東洋商事のプロジェクトの件で何回か東京とニューヨークを往復している。
アパートというのは、プラグインの代表である河崎が持っているペントハウスだ。
何しろ、河崎の祖父はアメリカの富豪で、孫である河崎にはペントハウスどころかプライベートジェットまで用意している。
藤堂は同居人である画家の五十嵐と一緒に来た時はホテルに泊まったのだが、今回はホテルを取る余裕もないくらい忙しかったらしい。
ホテルなど取らずにアパートをいつでも使えと河崎は藤堂に言っているようだが、五十嵐がペントハウスというより河崎を天敵にしているのだ。
ともあれ、藤堂からの情報ということは、工藤から藤堂へ、宮下が良太をCMに起用する云々が伝わったということだろう、と良太は一瞬イラっとした。
「いや、俺がCMにとか、それ、まだ決まったわけじゃないから。宮下さんから工藤の方に話があったとかって、こないだ工藤から連絡はあったけど」
「え、そう? だって、藤堂ちゃんの話だと、宮下さんから直々に言ってきたってことはもう決まったようなもんだって」
全くどうしてそうなるんだ、冗談じゃない!
良太は心の中で喚く。
「良太ちゃん、CM出たくないんだ?」
ややあって直子が聞いてきた。
「ってか、俺、CMに出るような器じゃないし、あくまでもプロジェクトを支えていくスタッフなわけで」
自分で口にしていて、あまり説明になっていないことは良太もわかっていた。
「俺も半強制的に大和屋のCM、出させられよったけどな」
すると直子の横で佐々木がぼそりと口にした。
「え? いや、佐々木さんは、だって、被写体としてもメチャ絵になる方だし」
「こないだの良太PのMLBレポート、沢村っちと一緒に出たじゃない。すっごくよかったよ?」
直子が念を押すように言った。
「だから、東洋商事の社運がかかったCMと、情報番組の即席レポートじゃ、全然意味が違うし」
一体、工藤さん、藤堂さんにどういう風に伝えたんだ。
もう決まりのようなことになってるんじゃないよな。
宮下はあくまでも良太を出すことになってもいいかどうかを打診してきただけで、良太を起用すると言ってきたわけではないし、第一宮下の一存で決まるわけではない。
「まあ、明日はミーティングでその話もあがるんやろうし、蓋を開けてみなわかれへんから」
佐々木が諭すように言うと笑った。
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