第一回のミーティングのように、翌日五時から東洋商事ニューヨーク支社の高層階には、CMプロジェクトの関係者が一同に集まっていた。
「やあ、良太ちゃん、頑張ってるね! みたよ、パワスポの良太Pレポート。面白かったよ」
佐々木、藤堂とともに会議室の階でエレベーターが開いた途端、ちょうど居合わせた綾小路紫紀が笑みを浮かべて良太を出迎えた。
「はい、ありがとうございます。こちらにいらしてたんですね」
多忙な紫紀までが出張って来るとは、良太も思っていなかった。
さらに、その発言に良太はまた固まった。
紫紀さんまであのレポートのことを持ち出すなんて。
嫌な予感しかなかった。
ミーティングではこれまで上がっていたいくつかの案を佐々木が具体化したプランが提示され、あちこちから意見が飛び交い徐々にヒートアップしていった。
ニューヨークから始まって、ロスアンゼルス、ローマ、東京、フロリダ、といった都市を背景に、そこに住む人々の生活のワンシーンが切り取られていく。
そこに起用されることになっている沢村とアスカが登場することになるのだが、今は彼らの静止画像が配置されている。
大概好感をもって意見が交わされたし、良太もどのプランも非の打ちどころがないと頷いていた。
「ここで一つ綾小路氏からひとつ提案があります」
進行役の広報室長からの発言を聞くその時までは、良太もすっかり自分がCMに加わる云々など忘れていたのだが。
「これをご覧ください」
紫紀が大スクリーンに映し出したのは、何と、先日のパワスポで配信された、良太PのMLBレポートだった。
えっと思う間もなく、市川が沢村と良太のやり取りを軽快に紹介していく。
配信されてから良太はあまりじっくり内容を見てもいなかったのだが、沢村と良太の掛け合いはいつもの二人そのもので、良太もカメラで撮られているのをあまり意識もせずにしゃべっている。
「これは先日スポーツ情報番組で配信されたレポートですが、思いがけず沢村氏の今まであまり知られていない彼の素顔がよくとらえられています」
すると、確かに、と大概の面々が頷いている。
ことは良太の一番危惧していた方向へと向かい始めていた。
うそだろ? こんなばかげてる!
「そしてこの沢村氏の新たな素顔を引き出しているのは、長年の友人である広瀬氏なんです。この二人の自然なやり取りをプランの中に取り入れられたら非常にいい絵になると思いませんか?」
紫紀がそう締めくくると、あれよあれよという間に良太の思惑などそっちのけで良太を除く満場一致でこの案も採用されることになった。
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