あの時のことを思い出すたび、渋い顔をしていた工藤も蘇り、それが良太は嫌だった。
その話を持ち出されれば、黒歴史、と自虐的に口にするのも工藤の顔色を気にしているからなのだ。
なのに、工藤ときた日には!
なーにが、ちゃっちゃか出た、だよ!
俺がどんな思いで……っ!
商品価値がない、そのキーワードは良太の心の奥底に引っ掛かったままだ。
工藤にそう言われて反発して、やってやる、なんて、ちゃっちゃかCMなんかに出てしまったのが、いろいろ面倒ごとにつながったのだ。
工藤にしてみれば、それみたことか、だったのだ。
自分には何もない、ついこないだまでそんなことを考えていた。
だが、こうして今、ネットプライムの研修に来て、横並びではないにせよ、同じ仕事に心血を注ぐ仲間とともに自分を磨いているのだ。
内海は、まあ、仲間とは思ってくれてはいないかも知れないが、良太にとっては彼女の存在もジミーも刺激になっている。
東洋商事のプロジェクトリーダーも、押し付けられたにせよ、絶対成功させて工藤の鼻をちょっとでもあかしてやりたい!
と、そういう意気込みもあったのだ。
それがどうだ、何で俺が出演する側になるんだよ!
「なんにせよ、良太ちゃんは、どんな状況になってもきっちりやり遂げる思うで?」
意図せずにまた大きくため息をついた良太に、佐々木が暢気そうに言った。
「そうそう! 佐々木さんの言う通り。良太ちゃんはこんなことでめげる男じゃない、と思うよ?」
藤堂が超楽観的な口調で頷いた。
良太は情けなさそうな顔で苦笑した。
佐々木から伝わったのだろう、その夜、お気楽な電話をよこしたのは沢村本人だった。
「お前も出るんだって? CM」
今日のゲームではホームランはなかったものの四の三で適時打を打ちチームの勝利に貢献した沢村は、ビシバシ頭や背中を叩かれてチームから手厚い歓迎を受けていた。
週末はホームゲームが続くので、今日は佐々木の部屋にいるという。
「面白そうじゃん」
「そう簡単な話じゃないよ。俺は俳優やモデルじゃなくて素人なんだぞ」
思わず良太がキリキリ言うと、「俺だって素人じゃん」と返された。
確かに、それに対して良太には返す言葉がない。
「第一、お前、前にドラマにも出てただろ?」
知っている者はすぐその話を口にするのだ。
「もうそれ、ほんと俺の黒歴史なんだって。ほんと、タレントがドタキャンして、急遽ピンチヒッターでやっただけで、それこそド素人がとったかみたかでできるようなもんじゃなくて、周りに大迷惑かけたし」
「ふーん? けど、見てる側にはそんなのわからないからな。いんじゃね?」
沢村のそんなセリフに、良太もまた頷かざるを得ないところはあった。
やっぱ、あの時のことで考えちまうのは、工藤の反応なんだよな。
back next top Novels
