何回もの撮り直しで、出演していた俳優陣、特に主演の大澤流にはめいっぱい罵倒されたが、工藤に啖呵を切って出演したてまえ、負けず嫌いの良太がそんなことで怯んだりはしなかった。
ただ、あの時ちょっと撮影を見に来た時も、いつもなら下手くそな演技に対して怒り散らさないはずがない工藤が一切何も言わなかったことが、余計に良太には堪えたのだ。
無論、佐々木や藤堂の言うように、どんな状況になってもきっちりやり遂げる覚悟はある。
だが、やり遂げることと、プロジェクトとしてうまくいくことがイコールとは限らないのだ。
いつぞや、幼い頃からドラマなどに出演してきたためまだ二十代なのに既に芸歴二十年を超えてベテランの域にいる実力俳優竹野紗英が、演技は確かでも物事をはっきり言う性格から、当時人気だけの新人と言われて共演していた本谷和正を散々こき下ろしていた情景が良太の頭に浮かぶ。
あの時、紗英から降りろ、くらいなことを言われていた本谷を何とかふんばらせようと、良太はろくでもない自分の黒歴史まで引っ張り出して励ましたのだ。
そのお陰かどうか、本谷はふっきれたようで、どうにか撮影をクリアした。
本谷にはその時のことをえらく感謝されたものの、撮られる側にいた本谷の心情を思うと、自分の立ち位置がいかに他人事だったかと、ひょっとして撮られる側になるかも知れない状況になってみると、良太は反省しきりだ。
「明日の晩、メシ、食おうぜ。直ちゃんも一緒に」
最後までお気楽にそう言うと、沢村は電話を切った。
絶好調一歩手前まできてるか。
沢村こそ、MLBでなんか活躍できるとは思えないなどと、こきおろす評論家が多々いたが、そんな雑音など跳ね返す勢いだ。
外野にどれだけクソミソに言われようが、沢村の支柱は常にぶれることはない。
それだけは傍で見てきた良太にもよくわかっている。
でも、沢村、こっちにきて生き生きしてるよな。
英語は堪能だから、チームメイトとのやり取りもスムースで、それこそ日本より素の沢村でいられるのではないか、と良太は思っている。
そんな沢村を起用してのプロジェクトは良太としては絶対成功させたい。
なのに、なんで俺なんだよ!?
明後日はまたドキュメンタリーの撮影が予定されている。
「くっそ、グタグタ考えるのやめ!」
頭を切り替えて向かわないと、と自分を叱咤して良太は頭からシャワーを浴びた。
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