幻月41

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 麻布警察署の留置所でまた浅い眠りのまま朝を迎えた工藤は接見に来た小田を見て苦笑した。
「毎日ご苦労なことだな」
「他人事のように言うな」
 小田は生真面目な顔で年季の入った鞄から手帳を取り出した。
「皆がお前のために動いている。しばらくの我慢だ。会社の方は問題なく動いているしな」
 眉を顰めてそう言いながら小田は手帳を開いてページをくった。
「小田」
「何だ」
 工藤に呼ばれて小田は顔を上げた。
「万が一の時は、会社は良太に任せる。お前からそう言ってやってくれ。秋山には良太をバックアップしてくれと」
「何を言い出すんだ。お前らしくもない」
 参っているとは思えないが、何かを決意しているようだと小田は工藤を見た。
「谷川くんも調査に協力してくれている」
「そうか」
「そうだ、良太くんからお前に伝えるように言われていたんだ。仕事の話だ。フジタ自動車の打ち合わせと、MEC電機から奈々ちゃんをCMに使いたいということで、プラグインの藤堂さんと一緒に打ち合わせをしたそうだ」
 手帳を見ながら小田は良太から言われたように工藤に伝えた。
 すると工藤は小田をしばし見つめたあと、少し目を眇めて視線を外した。
 なるほど、良太に連絡を取ってきたか。
 工藤は波多野の無表情な顔を頭に思い浮かべた。
 あの男が動いていたか。
 ということはやはり事件の裏でやつらが絡んでいたということか。
 下手なことにならなければいいが。
 

 


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